第176話 初歩的なミス



 いろいろとツッコミたいのだが、どこからツッコめば良いのか分からない上に、ツッコんだらツッコんだで色々と面倒くさそうな事になりそうなので、とりあえずニーナの言う側仕えとしての気持ちの持ちようというか心得的な事については勿論のこと、ダークエルフのリリアナと繋がっているというのは初耳であるという事についてはスルーする事にする。


 とりあえず分かった事は、リリアナとニーナが繋がっているという事は俺にプライベートな時間は皆無であるという事である。


 …………という事は、俺が自家発電している時も筒抜けであったという事であろうか?


 いや、流石の俺もリリアナが俺の影と通じている事は前々から知っていた為、自家発電の時は結界魔術を何重にも張って、リリアナとリンクしないように遮断して自家発電をしてきたのである。


 気づかれている訳がない。


 そう思うのだが、そこに『ニーナと繋がっている』という事が加わるだけで、なんでこんなにも不安になるのだろうか?


 確かに、ニーナはこの世界では男性に対して自分の欲望をかなり抑えられている方だと俺も思う(とはいうものの前世と比べるとダントツで変態なのだが、あくまでもこの世界での話である)。


 しかしながらだからこそニーナは溜め込んでいるのではなかろうか? と勘ぐってしまうのである。


 いわば、性欲や異性への興味は他者とはあまり変わらないくらい興味をもっているし同じくらい性欲も持っている、ただニーナがかなりのむっつりスケベなだけではなかろうか? と最近俺は思うようになってきた。


 という事は、俺の前ではぎりぎり理性を保てて(それでも大概なのだが)いるのだが、俺がいない所では欲望を爆発させているのではなかろうか? 何ならむっつりスケベ故に俺の前では発散できず溜め込んでいる分、俺のいない所では他者よりも酷いのではなかろうか? とう事である。


 もし俺のこの予想が当たっている場合(残念ながら当たっている)、そんなニーナとリリアナが繋がっている場合、例え結界魔術を行使していたとしても決して安全だとは思えないのだから恐ろしい。


 そこまで考えて俺は何か初歩的かつ大切な何かを見落としているのではないか? と思ってしまう。


 しかしそれが何か分からない。


 分からないのだが、初歩的な事故にとても簡単な事のようにも思えてくる。


 一体俺は何を見落としているというのか……。


 思い出しそうで思い出せない、そんな気持ち悪い感覚を味わう事数分。 俺は初歩的なミスを犯している事に気付き、恥ずかしさで顔が火照って来るのが自分でも分かる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る