第173話 俺がカレンドール先生を守ってやらなければ








 少し前からカレンドール先生の呼吸が荒くなっている事には気付いていたのだが、俺は気づかないふりをしてやり過ごそうとしていた自分自身を恥じた。


 そして俺がカレンドール先生の体調が悪い事を気付いていないふりをしてしまったせいで今カレンドール先生の体調は更に悪化してしまい、今にも倒れそうな程苦しそうではないか。


 呼吸は更に荒くなり、顔は赤らんで額には汗をかき始めているにも関わらず、きっと俺が生徒でカレンドール先生は大人で教師という立場、そして体育倉庫に閉じこめられてしまっているという状況から俺に心配をかけてはいけないと強がっていたのであろう。


 前世の俺からみてもまだまだ若いと思える年齢のカレンドール先生である。 前世でカレンドール先生ぐらいの年齢の頃の俺はまだまだ社会人なりたてで自分の事で強いいっぱいだったはずである。


 そんなことくらい少し考えれば分かる事であろうに、目の前のカレンドール先生は俺の事まで考えて行動してくれているのである。


 それは物凄く立派であり、俺なんかよりもずっと大人であると思うのと同時に、だからこそカレンドール先生に対して俺が『弱みを見せても良いんだよ』と言ってやらなければならなかったのである。


 前世も合わせるとカレンドール先生よりも二周りも長く生きて来てこれでは、流石の俺も自分で自分が情けないと思ってしまう。


「ほ、本当に大丈夫ですかっ!?カレンドール先生っ!! 息が荒くなってきてますが……もしかして閉所恐怖症とかじゃないんですかっ!? 生徒の前だからって無理して教師を演じる必要はないんですよっ!!」


 流石に情けない自分に気付いてしまっては行動を起こさなければ、更に情けない事になるし、そんな自分にはなりたくないと思った俺はすぐさまカレンドール先生へ声をかける。


「ほ、本当か? クロード……。 本当に今私は教師を演じる必要はないのか……っ!?」

「ないですっ!! 今は教師と言う立場を気にするよりも先生の体調を気にする方が先決ですからっ!!」


 そして、やはりというかなんというか、かなりカレンドール先生は無理していたようである。


 生徒であり年下で、本来であれば守らなければならない対象を前に、あのいつも凛としていてカッコいいカレンドール先生が弱音を吐いているところを見るに、俺が思っていた以上にカレンドール先生は限界であった事が窺えて来る。


 そんな、見るからに弱々しいカレンドール先生を見て『ここは俺がカレンドール先生を守ってやらなければっ!!』と思ってしまう。

 

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