第158話 恋愛マスター


「甘い……。 甘すぎます。 はちみつとチョコレート、ホイップクリームをトッピングしたパンケーキよりも甘すぎます。 というか自己防衛意識が低すぎると言わざるをえません」


 そして普段は側仕えとして弁えてくれているニーナが、今日に限ってはかなり食い下がって来るではないか。


 一瞬、本当にカレンドール先生はヤバいと思えるからこそニーナはここまで食い下がっているかもしれないと思ったのだが、それよりも俺と離れたくないという感情から来ているのだろうという結論に至った。


 もちろん、それだけではなくニーナなりに俺の事を心配しているというのも事実ではあろうが、俺の側仕えであるという事にプライドと誇りを持っているが故の『俺の側を離れたくない』という事なのであろう。


「ニーナが俺の側仕えであるという事にプライドと誇りをもって務めているが故の発言でる事は理解しているのだが、まぁ大丈夫だろう。 もしカレンドール先生に何かされそうになった時はなった時に考えるさ」

「ク、クロード様っ!! お考え直してくださいっ!!」


 そして俺は尚も引き留めようをしてくるニーナにひらひらと手を振ってカレンドール先生のそばまで行く。


「メイドとの話はついたのか?」

「あ、はい。 話はついたので行きましょうか。 何を手伝えば良いのでしょうか?」

「まぁそう早まるな。 目的の場所についてからでも遅くは無いだろう?」

「それもそうですね」


 見よニーナ。 カレンドール先生の大人の対応を。


 年中発情して若さゆえの性欲を爆発させたような同世代の女の子たちとは違うのだ。


「クロード様の唐変木っ!! 鈍感っ!! どうなっても知らないですからねっ!!」


 そしてニーナはこの俺に対して唐変木だの鈍感だのと言うではないか。


 前世では数百人の女性たち(恋愛シミュレーションゲームのヒロインたち)を口説き落としてきた恋愛マスターに向かってその言いよう……流石に聞き捨てならないので、カレンドール先生の手伝いを無事終えて帰る事によって以降俺に対して唐変木や鈍感などと言わせなくさせてやろうではないか。


「ほーん、では俺が無傷で帰って来た暁には、俺の事を唐変木や鈍感と言った事について謝罪してもらおうか」


 そうニーナに言うと、俺はカレンドール先生と一緒に目的の場所へと向かうのであった。








「ふふ、これでクロードきゅんと密室で二人っきりになれる……っ!」








「ここだクロードきゅ……んっ!! クロード」


 そしてカレンドール先生と行き着いた先は体育館倉庫であった。


 何故だろうか? 少しばかり嫌な予感がしてきたのは気のせいだろうか?

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