第154話 あ、ダメっ、こんなところで





 今私は明らかに出遅れている気がする。


 いや、気がするではなくなどと自分に嘘をついているようではタダでさえクロードきゅんと歳も近く同じ学友でもあるクラスメイト達にさらに遅れを取ってしまう事になるだろう。


 ここははっきりと認めるべきである。


 私は今明らかに出遅れている、と。


 ニーナに始まり、ジュリアンナ、そしてまさかのオリヴィアまでこの短期間でクロードきゅんの懐に入って正妻候補に入り組んでくるとは誰が思っただろう。


 正直私は、女子生徒がお互いに牽制した上で、裏では協定がガッチガチに結ばれてしまうまともにクロードきゅんに手を出せなくなってしまうのではという仮説を立てていたのだが、所詮は机上の空論でしかなかったという事である。


 それは私だけではなく、出し抜かれた他の女生徒達も同じ気分であろう。


 まさかたった一か月で、もともと埋まっていた嫁候補枠のニーナさんに加えてジュリアンナとオリヴィアまでその枠に加わってしまうと、残り妻の枠は三枠しか無いことになってしまう。


 もうこうなっては大人の余裕どうこうなど言っていられなくなって来ている訳で。


 で、でもでも……クロードきゅんに私の本心を伝えてドン引きされたらどうしよう……。


 そして、私は今まで男性を襲うような女性たちの神経が分からなかったのだが、クロードきゅんに恋してしまっている今ならば痛いほど理解できてしまう。


 嫌われるくらいならば襲ってしまえ。 そして子種を貰い、子供を授かる事ができたのならば、あとは一生塀の中で暮らしても、生きていけるだけの幸福感と素人処女ではないという(ディルド(精巧に作られたゴーレム)ではなくちゃんとリアルの男性と逢瀬を躱したと事による)優越感を感じる事ができる。


 おそらく今まで男性を襲ってきた女性たちは、残りの人生を塀の中で過ごしてでも好きな異性を犯してドッキングする方を選んだのであろう。


 そんな女性たちを『自分の欲望と行動をコントロールできないサル擬き』だと見下していたのだが、愛を知った今では『自分の愛を貫いた勇者』であると思え始めている自分がいた。


 駄目だ駄目だ……その考えは、喜ぶのは自分だけでクロードきゅんに不快傷を負わせてしまうかもしれないっ!!


 そんな事、私は耐えられない……っ! 


 で、でも……逆にそんな深い傷を負ったクロードきゅんを大人の包容力で癒してあげたいかも……あ、ダメっ、こんなところで……あんっ!


「おっと、涎が……」


 いかんいかん。 学園で涎を垂らしている所を生徒たちに見せるところであった。 学園での妄想は気を付けよう……っ。

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