第150話 この光景は恐怖でしかない
俺は考えた。
流石に使用済み洗濯前のパンツはアリアに渡すため、別の使用済み洗濯前のパンツを渡す事は俺が二人いるか、元からストックしていないかぎり不可能であると。
少しばかり『一応一瞬でも履けば使用済み洗濯前のパンツになるのでは?』と考えてみたりもしたのだが、それはなんだか違う気がするし、ニーナも納得しないだろう、と思った為使用済み洗濯前のパンツと同等かそれ以上の事をしてあげなければならないのでは? と思い悩んだ結果出した答えが『ハグor頭撫で』である。
使用済み洗濯前のパンツのように形に残るものではないのだが、この世界では『男性にハグされた上に頭を撫でられるという経験はとんでもなく貴重、それこそ男性の使用済み洗濯前のパンツよりも貴重な体験になるのでは?』という答えにたどり着いたのである。
これならばきっとニーナも及第点をくれるはずである──そう俺は思っていた。
しかしながらいざニーナをぎゅっと抱きしめ、そしてニーナの頭を片腕で抱きしめながら撫でてあげると、ニーナは奇声を上げながらビクンビクンと白目を剥き、涎を垂らしながら痙攣し始め、最終的には気絶してしまうではないか。
え? 普通にドン引きというか……これってニーナは大丈夫なのか? てかニーナをどうしようか……流石に家の中とは言えども廊下にそのまま寝かせるのもな……。
と、ニーナをお姫様抱っこしてあげながら考えているとどこからともなく呼んでもないし支持も出していないにも関わらず使用人二人が現れていつの間にか用意された担架にニーナを乗せると、そのまま『えっほえっほ』と運んで行ってくれるではないか。
そのタイミングの良さ、そして手際の良さに唖然としていると、いつの間にかジュリアンナが俺の前に立っており上目づかいで期待に満ちた目線を向けて来るではないか。
「じゅ、ジュリアンナ……?」
「…………っ」
きっとこれは『私には何もないのですか? 私もニーナさんとおなじようにハグからの頭撫で撫でしてくれても良いのですよ?』という無言の訴えなのであろう。
そして疑問形であるのになぜか『私もハグと頭撫で撫でしなさいっ!!』と命令しているようにしか見えないのはきっと気のせいではないであろう。
さて、どうしたものか。
そう思いニーナから視線を外してみると、ニーナの後ろには使用人が列をなしているではないか。
これはまるで『ハグして頭撫で撫でしてくれないと、私たちは暴動を起こしますよ?』という風にも感じてしまう。 最早この光景は恐怖でしかない。
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