「ダメだぞ？」

「え？　私はまだ何も言ってないんですけど？」

　そして俺は自分の第六感を信じてニーナが何かを喋る前に先手を打って断る事にする。

　しかしながら、当然ニーナはそれで納得するわけもなく、不満たらたらな目線を向けながら頬を膨らませており、その姿を不覚にも可愛らしいと思ってしまうのだが、この可愛らしさに騙されてはいけない。

　この世界ではまだマシ（・・・・）と言うだけでその中身はド変態そのものである。

　なんなら他の者より多少は自制心が強い為欲望を抑え込む事ができるというだけでその内側に秘めている変態魔獣は、他の者と同等レベルである可能性は十二分にあるのである。

　なんなら今までその自制心によって抑圧してきたニーナの変態部分が俺の側仕えとなることによって発酵してしまいとんでもない化け物をその内側に飼っている可能性だってあるのだ。

　ならばその化け物が表に出てしまう切っ掛けになってしまうような事はできる限り避けるべきであろう。

「これは明らかに使用人に対する差別だと思いますっ！！　私はこのような理不尽なパワハラ紛いな対応には断固として戦いますよっ！！」

「いや、そこまで？　というか、どうやって戦っていくんだよ？　『クロード様が私の望みを聞いてくれません』と道行く人々に訴えていくのか？」

　もしそうだとしたら流石に無理があるだろう。

　それならば別に放っておいても良いのかもしれない。

「え？　クロード様のお母様でありクヴィスト家の当主様であるスフィア・ペンド・クヴィスト様へ『クロード様が使用人をエロい目で見始めて来ており、いつその若さゆえの性欲が爆発するのか分からない非常に危ない状態ですので至急貞操帯をこちらへ送っていただけないでしょか？』と速達で手紙を送るだけですが？　あ、ちなみにその場合は貞操帯を外すカギは私が預からさせてもらいますので、外したいときはその度に私にお願いしてもらう形になるかとおもいます」

「分かりました。　一応ニーナさんの言葉を聞くだけ聞いてみましょう。　確かに俺も聞きもしないで断るのは失礼であると思っておりましたからな。　しかしながら俺にもできる事とできない事があるので必ずしも全ての要望を応えるという事ではないという事だけはご理解していただきたいと思います」

　いや、流石にそれはシャレにならない。　いろいろとシャレになっていない。

　お母様にある事無い事伝える時点でもうやばいのだが、貞操帯もヤバければ貞操帯の鍵をニーナが持つと言うのは最上級にヤバすぎると言えよう。