第144話 もうこの時点で不安
「そうだな、今日ジュリアンナがここに泊まるみたいだから夕食と朝食はいつもよりも一人分多く作ってくれないだろうか」
「はい、可能でございます。 大船に乗ったつもりでいてもらって大丈夫でございます。 何ならいつもより豪華にしてあげましょう」
うん、じつに頼もしい返事であるのだが、何故だろうか? 少し嫌な予感がするんだが……。
「とりあえず前回ジュリアンナが泊まりに来た時と同じで大丈夫だから。 あと、いつも美味しい料理を作ってくれてありがとう」
「あぁーんっ!! クロード様、そんな風に褒めては、私耐えられなくなってしまいますぅっ!!」
とりあえずやけに張り切ろうとするアリアに俺の第六感が気をつけろと警告を送って来るので俺はその警告にしたがってこないだジュリアンナが泊まりに来てくれた時と同じように普通でかまわないと言ったのだが、それだけだとなんか偉そうな子供だと思われかねないので一応いつも美味しい料理を作ってくれる厨房で働いているみんなに向かって日頃の感謝の言葉とともに、ついでに笑顔もプレゼントしておく。
感謝の言葉も笑顔もプライスレス。
タダでできるのにメリットしかない行為なので有効な場面では率先してやった方が良いだろう。
しかしながらメリットしかないと思っていた俺の行為は眠れる獅子を呼び起こしたみたいである。
アリアを含めて厨房で働く女性たちは俺から感謝の言葉を貰った時に胸を押さえ顔は高揚し息遣いは荒くなっており、その目の中にはハートマークが見える気がするのだが恐らく気のせいであろうと思いそのまま全員に見えるように笑顔を向けると、笑顔を向けられた者から順番にまるで銃に撃たれたかの如く後方に吹き飛んでいき、唯一吹き飛ぶのを堪える事ができたアリアの表情はとろけきっているではないか。 キリっとしている普段のアリアの面影は見事に消え失せ、涎まで垂れ始めているではないか。
せめて涎だけでも拭いてほしい。
そんな事を思っていると、急にアリアは物凄い高いテンションで俺の言葉に返事をするではないか。
てか、耐えきれなくなるってなんだよ……。
そして、そんなアリアを見て改めてニーナがいかに優秀であるかが窺えて来る。
「と、とりあえず夕食は頼んだぞ?」
「はいっ! 任せてくださいっ!!」
うーん、自信満々に答えてくれるアリアには悪いのだが、もうこの時点で不安になってくる。
「とりあえずまかないように出汁を取りたいのでご主人様の使用済み洗濯前もいただきたいのですが?」
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