第134話 欲しくないのですか?



「私はしっかりとこの両の眼で見ましたぁぁあっ!! 信用できないと思いちゃんと魔術具で撮影もしてまーーすっ!!」

「見せてっ!! ミリアっ!! その、巷で話題のクロード様とお姉ちゃんがデートしている証拠をっ!!」

「ちょっと、待ちなさいっ!! キアラっ!!」


 そして妹のキアラは姉である私の言葉など聞くわけもなく妹の友達であるミリアが持っている証拠写真をふんだくってまじまじと眺めるではないか。


「ちょっ!! こらっ!! 見るのを止めなさいっ!! そもそも妹ならばお姉ちゃんの言う事を聞きなさいっ!!」

「ちょっとお姉ぇっ!! 邪魔しないでよっ!! そんなに身体を揺さぶられたら写真がぶれて見えないじゃないっ!!」

「見せないようにキアラの身体を揺さぶっているんだから当たり前よっ!! とりあえずその写真を今すぐ私に渡しなさいっ! そんな写真は今すぐにでも燃やしてあげるんだからっ!!」

「そんな事ダメに決まっているでしょうっ!! この写真は私の友達のミリアの物でお姉ぇの物じゃないんだけどっ!? 他人の私物を勝手に燃やしたらダメなことくらい五歳児でも分かるんだけどっ!?」

「あ、ちなみこんな事もあろうかと私が持って来た写真は、一応原本じゃなくてコピーなのでいくら破いても大丈夫ですよ、キアラのお姉さんっ!! 原本が手元にある限りいくらでもでも現像できますからっ!!」


 そして私は目の前にある私とクロード様がデートをしていた写真をキアラの手元から奪い去って、燃やしてしまおうと思っていたのだが、それを見たミリアがまるで『私、気が利くでしょうっ!!』というような雰囲気を醸し出しながら自慢するかのようにキアラが持っている写真は複製したもので原本は別にある為、原本を燃やされない限りは何枚でも複製できるから安心してほしいと言ってくるではないか。

 

 そんな事を言われて安心できる訳がないだろう。


 むしろ常にいつでも私を殺せるボタンをミリアが持っていると言っても過言ではないので、ミリアのもとに私とロード様のツーショットが写った写真がある限り私は不安により安心して夜寝ることが出来なくなるだろう。


「オリヴィアお姉さんはこのツーショット写真は欲しくないのですか?」


 そんな私にミリアは悪魔のような囁きとともに一枚の写真を懐から出してキアラを必死に揺さぶっている私に見せて来るではないか。


「こ、これは…………っ!!」


 そして私はミリアが見せて来た写真を見て息をのむ。


 そこにはクロード様に『あーん』をしてくれている瞬間の私とクロード様の二人が写っているではないか。

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