第125話 私たちかもしれない
なんとかニーナさんはクロード様の使用済み洗濯前の下着の匂いで正気に戻って来たようである。
しかしながらまだどことなく夢うつつな感じがする為妄想の世界へ行ってしまわないように要注意である。
「すーはーすーはーっ。 すーーーーーーーはーーーーーーーっ。 もごもごもごもごもごもごもごっ!!」
「あの、ニーナさん……。 口と鼻をクロード様の使用済み洗濯前の下着で塞いだまま喋られても何を言っているのか何も分からないわ。 ずっと吸っていたい、嗅いでいたいというそのお気持ちは痛いほどわかるのだけれども、せめてなにか話すときは口元からその使用済み洗濯前のパンツを離してから話してほしいわね」
「ご、ごめんなさい。 しかし、ジュリアンナのおかげで妄想から帰ってくる事ができました。 ありがとうございます。 妄想は帰宅してから存分にできるので。 今はその妄想の糧となるクロード様の一挙手一投足をこの目に焼き付ける事が何よりもの重要事項だというのにっ!! 私としたことが、まだまだですね……悔やまれますっ!!」
ニーナさんはそう言うと早速クロード様とオリヴィアの二人がいちゃついている姿を目に焼き付けようと、その目をかっ開いて見始めるではないか。
そんなニーナさんの姿を見て私は疑問に思った事を聞いてみることにする。
「あの、ニーナさん」
「ふがふがっ! クロード様の使用済み洗濯前のパンツを嗅ぎながらクロード様を遠くで見るというのは、クロード様が遠くにいるのになぜか近くにいるよう感じもして、こ、これは癖になりそうですね……っ。 …………なんでしょうか? ジュリアンナ」
取り合えず前半部分をツッコんでしまったら聞きたいことに辿り着くまで長くなりそうだった為、私はツッコみたい気持ちをぐっと堪えて聞きたいことを話す。
「先ほどニーナさんからこの嫉妬心はクロード様と出会えたからこそ感じる事ができる愛おしい感情の一つであるという事は理解できるのだけれども、むしろ今ニーナさんは嫉妬心を感じるというよりかはとても幸福そうに見えるのは……それはなぜかしら?」
そう、クロード様がオリヴィアとイチャイチャ、それもクレープを『あーん』をしあっている光景を見て嫉妬心に駆られるのであれば分かるのだが、なぜだかニーナさんは幸せ絶頂といった感じでトリップしてしまったのである。
そのことが私は不思議で仕方なかったのだ。
「それは簡単な事ですよ、ジュリアンナさん。 クロード様の恋人となった者は目の前で起こっているような甘いデートができるという証拠でもあるからです。 そして私とジュリアンナさんはそのデートを味わう事ができる可能性が非常に高い、そう、明日オリヴィアさんの場所にいるのは私たちかもしれないという事です」
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