第120話 プロトタイプ
この笑顔は俺がこの世界に転生して、さらに前世では比べ物にならないほどにイケメンであるということが分かった時から今まで十数年、毎日欠かさず鏡の前で練習をしていたのである。
その笑顔の名を『女の子を一撃で落とすイケメン笑顔(プロトタイプ)』である。
ちなみになぜプロトタイプかというとまだこのイケメンスマイルを女性の方に使ったことがない為、どれほどの破壊力があるのかが分からないからである。
故にこれから要所要所で使っていきデータを集めて改善していく必要があるだろう故に、プロトタイプなのである。
しかしながら、クレープ屋の店員さんの反応を見る限り、この『女の子を一撃で落とすイケメン笑顔(プロトタイプ)』は破壊力が俺の想像していたものよりもかなり威力が高いようである。
まさに一撃必殺と言っても過言ではないだろう。
これは威力を落とさなければ、と思いながら明らかに通常の倍はあろう量のバナナチョコクレープとイチゴクレープを店員さんから受け取る。
すると店員さんは限界だったのか俺がクレープを受け取ったのを見届けると幸せそうな笑顔で倒れてしまう。
一瞬だけやばいかもと思い助けを呼ぼうとするのだが『今私は幸せを噛み締めながら貴方が私に向けてくれた笑顔を反芻しているの。 だから身体のどこにも異常はないし私は健康そのものだから助けを呼ぶ必要はないわ。 むしろ幸せすぎて、幸せのキャパが足りずに溢れかえってしまっているだけだから。 だから、大丈夫よ』と言っているのでおそらく大丈夫であろう。
「それじゃぁ、近くにある公園のベンチに座ってクレープを食べようか?」
「う、うんっ!! 賛成賛成っ!! 歩きながら食べるクレープもいいけど、公園のベンチに座ってゆっくりと食べるクレープもまたいいよねっ!!」
そしてオリヴィアは当初よりも俺と一緒にいることに慣れてきて緊張が解け始めたのか本来のオリヴィアらしさが出てきているように見える。
もしそうであれば嬉しいし、これが演技であるというのならばもう騙されてもいいとすら思う。
とりあえず言えることはベンチに二人で座るということがどういうことであるのかオリヴィアはまだ想像できていないようであり、反応が楽しみであるという事である。
そして俺とオリヴィアはクレープを手に公園へと入るとお目当てのベンチへと二人で座る。
当然俺はオリヴィアにピッタリと座り、密着してしまうため肩と肩がくっついてしまう。
肩と肩がくっつく程の距離感で座る、たったこれだけのことなのだが、先ほどまで楽しそうにおしゃべりしていたオリヴィアの口数が極端に減り、顔を赤く染めていくのが分かる。
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