第116話 全く分かっていませんね
本当は『もっと私にかまって欲しい』『もっと私の事を見て欲しい』『そんな女よりも私の方が深い所で繋がっているはずである』『私ではない他の女性と深くつながってほしくない』などなど、私の中にある黒い感情が噴き出してしまいそうになるのをグッと我慢する。
そして、この感情は私だけではなくニーナさんも同じ心境だろう。 そう思い横にいるニーナさんの方へ振り向いてみると、そこには恍惚な表情を浮かべたニーナさんがいるではないか。
その光景に一瞬引きそうになるのを堪えて私は何でそんな恍惚な表情をしているのか、胸がチクチクと苦しくないのかと聞いてみる事にする。
そもそも考えてみれば私もニーナさんより後にクロード様と仲良くなった身であるのだから、ニーナさんからすればこれが二人目でもある。
にもかかわらずそんな表情ができるのはニーナさんなりの答えがあるのかもしれない。 そう思うのと同時に今クロード様とお話をしているクラスメイトであるオリヴィアさんは、ニーナさんからすればあの日の私でもあるのだ。
そう思うと何だか黒い感情を持て余そうとしている自分がちっぽけな存在にさえ見えてきて余計に空しくなる。
「あの、ニーナさん」
「何でしょうか?」
「どうしてそんなに恍惚な表情をしながら盗み見る事ができるのかしら?」
「この状況で話しかけてくるものですから、いったいどんな内容かと身構えておりましたが、なんでもない、そんな事ですか」
そしてニーナさんは私の質問を聞くと『そんな単純な事も分からないのですか?』というような表情で答え始める。
「す、すみません」
「良いですか? 今あなたは恐らく他の女生徒仲良くするクロード様を見て胸が苦しくて、黒い感情も湧き出してきて、それらを今持て余している状態なのでしょうが、胸が苦しいのも、黒い感情を抱いてしまうのも何故ですか?」
「何故って、クロード様の事をお慕いしているからかしら」
そんな事分かりきっている。
私はクロード様を愛しているからこそ他の女生と楽しそうに談笑している姿を見ると苦しいのである。
しかしながらニーナさんは私の答えを聞くと『全く分かっていませんね』といった表情で首を横に振る。
「ではそのお慕いしているという感情を抱いているのは何故ですか? クロード様に出会えたからではないのですか? それは言い換えればお慕いしている感情も今苦しいと思う感情も、そしてこれから感じるであろうクロード様関係の感情は全て、私達がクロード様と出会い、そして繋がっているからこそ感じる事の出来る感情です。 逆に、そのような感情を知らずに一生を過ごす女性が殆どの中私たちはその感情をクロード様と出会う事によって抱くことができたのです」
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