第114話 てかもう夢でも良い

 というかそもそもオリヴィアと放課後デートするという事は、この世界で甘酸っぱい青春を謳歌できる最初で最後のチャンスでもあるという事でもあるのである。


 手放してなるものかと思うのと同時に、少しでもその甘酸っぱい時間を過ごしてやろうと放課後デートをする時間を引き伸ばそうとするのは、俺にとっては当たり前の事である。


 確かにこの世界の男性であれば俺の考え方は異常であるとは思うのだが、しかしながらそれは今この環境がいかに我々男性にとって恵まれた環境であるかという事を知らないからである。


 それは俺にとってかなりありがたい事なので他の男性たちはこの環境が恵まれている事には是非このまま気づかないでいてほしいと切に願う限りである。


「うーんそうだな……逆にオリヴィアはどこか行きたい所とかあるか?」

「じゃ、じゃぁ……私セイム川のボートに乗りたいっ!! だめかな? ………………た、確かセイム川のボートに二人で乗ると、片思いの場合はその恋が成就して、両想いであれば永遠にその愛は色褪せずに紡がれていくって昨日読んだ恋愛小説に書いてあったからここは何としても行かなくてはっ!!」


 そして俺はクレープを食べた後はどこか行きたい事はないか聞いてみるととオリヴィアはモジモジとしながらもセイム川の手漕きボートに乗りたいというではないか。


 そのボートに乗ってみたいという理由もダダ漏れなのだが、それがまた純粋な乙女心から来ている事が分かるため、それがあまりにも可愛くて俺は口元がにやけてしまいそうになるのを必死に抑える事に必死になってしまう。


 そもそもこのオリヴィアというギャル風の少女なのだが、先程の妄想でも『ボートならば逃げ場がなくなり、そうなれば後は襲って既成事実を作り放題じゃないっ!!』とならない辺りがこの世界の女性からすれば信じられないくらいに初心うぶである事が窺えてくる。


 そして俺が『何かしたい事』ではなく『どこか行きたい所』を聞いたのは、後者の方が長く一緒にいられると思ったからであり、むしろ俺の方が下心があるという、この世界では非常に珍しい現象が起こってしまっていたりするわけで。


 さぁ、これから前世ではできなかった甘酸っぱい青春を存分に取り戻していくとしよう。


「では、お姫様。 改めて、これから俺と一緒に放課後デートへ向かいましょう」

「おひっ!? お姫様っ!? あわわわわわっ!? やばいっ!? 本当にこれ夢じゃないよねっ!? てかもう夢でも良いっ!! はいっ!! 行きますぅぅぅうっ!! むしろ夢ならば一生醒めなくても良いっ!!」

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