第109話 オリヴィアは未だ気付けていない




 

 これはやっぱり夢なのだろうか? 夢であったのならば出来過ぎであると言えよう。


 夢ですら出来過ぎだと思えるような事が起こっているのだから、今これが現実だというのが未だに信じられないでいる。


 というか信じろというのが無理だろう。


 それこそ漫画やアニメ、ドラマの世界の話でしか起こらないような事が今私の身に起こっているのだから仕方がない事だろう。


 男性と放課後手を繋いで一緒に帰るなどという都市伝説がこの世に存在するなんて……っ。


 しかもこれまた都市伝説だと思っていた恋人繋ぎである。


 間違いなく今この世界で一番幸せなのは私であると断言できる。


 そもそも同級生に男性が、しかも同じクラスにいる時点で宝くじで一等を当てる確率よりも低いのに、さらに一緒に恋人繋ぎで帰るだなんて、明日私は運を使い果たしてしまって死ぬのではなかろうか?


 しかしながら周囲を見渡せば悔しそうに、そして羨ましそうに私たちを射殺さんばかりに見つめてくる女性たちをみると変な優越感を感じ、それと同時に今この時が夢じゃないんだという事が分かる。


 ほっぺをつねらなくても彼女たちの殺気のおかげで『この殺気は夢じゃない』と分かるのでわざわざほっぺをつねる必要も無いだろう。


 もし法律で男性とデートしたからという理由で逆恨みして危害を加えた場合は二十年以上の懲役という法律が無ければ、私は今頃間違いなく彼女たちによって集団リンチに合っていただろう。


 なんでこんなにも重たい刑罰になってしまったのかというのを身をもって体験するとともに、刑罰が重たくて良かったと心から安堵する。


「それで、これからどこへ行く?」

「はえ? ど、どこへって……ど、どこに……? か、帰るだけでは?」


 そんな事を思っているとクロード様が『これからどこへ行こうか』と聞いてくるではないか。


 私は寄り道せずにそのまま一緒に帰るだけだと思っていたし、男性と恋人繋ぎで一緒に帰るだけでもう私のキャパシティは余裕で超えているにも関わらずそこに更に一緒に寄り道をするというイベントが起こってしまうと、もう私は本当に死んでしまうかもしれない。


 やばいやばいっ、クロード様と一緒に寄り道ができるとか、神様、今まで祈った事もないけれども本当にありがとうございますっ!!(ちなみにこの心の声はクロードにまる聞こえである事をオリヴィアは未だ気付けていない)


「何言ってんだよ。 俺はただ一緒に帰るだけのつもりだったんだが、オリヴィアが『放課後デート』だと言ったんだろう? ちゃんとデートっぽいことをしようぜ?」

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