第108話 恋人繋ぎ

「ごめんごめん。 じゃぁ一緒に帰ろうか」


 そして俺達は放課後デートへと向かう。


 うーんなんだろう、この感じ。 ……ものすごく甘酸っぱい青春のど真ん中に今まさに俺はいるような、そしてそれを冷静な俺が遠くから見ているような変な感覚である。


 まだ完全に夕暮れとは言えないのだが、これから日が暮れてくるといった感じの内容の日差しに照らされた校舎を、異性であるオリヴィアと二人で出る。


 ただそれだけの事なのに青春濃度が濃すぎてむず痒くなってきてしまう。


 ニーナやジュリアンナでは決して感じることができない純度百%の青春をダイレクトに喰らっているような、そんな感じである。


 もし前世でもこのような青春を送れることができたのならばどれほど良かったことか。


 そして今俺は前世では叶えることができなかった青春の一ページを今世で叶えることができたのだ。


「どうしたの? クロード様」

「ごめんごめん、何でもない。 さぁ、行こうか」


 だからだろうか。 俺は自然にオリヴィアへと手を差し伸べる事ができた。


「……えっと」

「どうせだから手を繋いで帰ろうか。 もし嫌だったらやめるけど、どう──」

「嫌じゃないっ!! 嫌じゃないよっ!! …………むしろ大歓迎というかっ!!」

「じゃぁ決まりね」


 そして俺が差し出した手をオリヴィアは不思議そうに見つめてくるのでもしかしたら嫌なのかな? と思い聞いてみればオリヴィアは俺が言い終える前に首をブンブンと横に振って嫌じゃないと言ってくれる。


 ならば手を繋いでみようと思うのだが、ただ手を繋ぐのは面白くない。 ここはやはり恋人繋ぎであろう。 という俺の中の悪魔がそう囁いて来るので俺は素直にその囁きに乗る事にする。


「う、うん……っ」

「じゃぁ、繋ぐね?」

「ひゃくぅうっ!? く、くくくく、クロード様っ!? ゆ、指を絡めらる繋ぎ方はちょっとっ!! わ、私の心臓が保たないんだけどっ!? あひぃっ!」


 そして俺はオリビアの指に絡めるようにして手を繋ぐと、ただでさえ緊張でガッチガチになっていたオリビアの身体が一瞬だけ跳ね上がったかと思うと顔を真っ赤にしながら抗議して来る。


 オリビアの気持ちは痛いほどわかる。


 そして耐えられないのは嬉しさがキャパオーバーしてしまっているからというのも。


「オリヴィアは俺と手を繋ぐのは嫌じゃないっていったからさ。 やっぱり嫌だったかな?」

「い、嫌ではないよっ!? 嫌ではないけど、その、つなぎ方というか繋ぎ方というかっ!!」

「うん? とりあえず嫌ではないって事で良いのかな? それじゃぁ行こうかっ!」


 そして俺は聞こえないフリをして半ば強引にオリヴィアの手を引っ張って歩き出す。

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