第101話 どこかどこか辛そうに見えた
とりあえずこんな場面を誰かに見られでもしたらどう考えても俺が加害者であり、何か女の子が泣いてしまうような最低な行為をしたのではないかと思われかねないので俺は目の前で泣いているクラスメイトの女の子をあやしにいく。
しかし俺が優しく声をかければかけるほど女の子は泣き始めるので言葉であやすのは無理だと悟った俺は女の子を軽く抱きしめて、泣く子供をあやすように背中を摩りながら頭を撫でる。
どれくらいそうしていただろうか。
流石に抱きしめてから数分間は泣き止まなかたので、もしかしたら抱きしめた事でセクハラだと思われているのではなかろうかと心配になってきた所で『ずびずびっ』と鼻を啜る音が聞こえ始めたので、泣き止んでくれた事を察してホッとする。
「……大丈夫か」
ここで俺は、俺が声をかけた事を謝罪しそうになったのだが、本能でそれは逆効果であると思った為咄嗟に女の子へ『大丈夫か』と声をかける事にする。
「ご、ごめんね。 大丈夫だから。 あと、クロード様は何も悪くないよ? もし私が泣いた事でクロード様が自分を責めているんだったら、それは違うからね?」
言ってしまった後に大丈夫じゃないから泣いているんだよという事に気づきやってしまったかと思ったのだが、どうやら『大丈夫』で正解だったようである。
「それなら良かった。 でも、俺のせいではないとすると、他に何か悩み事があって一人では抱えきれなくなったとかか? そうであるのであれば俺が話を聞こうか? 俺で答えられる物であれば答えるし、手伝える事であれば可能な限り手伝うぞ?」
「ありがとう。 でもその気持ちだけで嬉しいかも。 確かに私が泣いてしまった原因は私の悩み事が原因ではあるんだけどね……」
そして女の子はそう言いながら笑うのだが、その笑顔はどこか辛そうに見えた。
流石にそんな表情をする彼女を放っておくことはできないと思った俺は、女の子にその旨を伝えようとして気づく。 気づいてしまう。
俺は女の子の名前を知らない事に。
普通に考えてクラスメイトの名前を知らないって最低な事であることくらいは俺にだって理解できる。
さて、どうやって女の子の本名を確認すれば良いのだろうか。
そう思った俺は閃く。
「そうなんだ……。 それで、えっと、俺はなんて呼べば良いかな? あ、別に名前を知らないというわけではなくてニックネーム的な呼び方を知りたいだけで他に他意は無いからね?」
「わ、私の事? 私はよく仲のいい友達からはオリヴィアってそのまま呼ばれる事が多いかな? お母さんからはオリちゃんとか呼ばれるけど……」
「なるほど、じゃぁ俺も友達が呼んでいるようにオリヴィアって君の事を読んでも良いかな?」
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