第99話 こんな私を好きになってほしいほしい


 実際に私はクラス一美人でもなければクラス一可愛いわけでもないし、クラス一スタイルが良いわけでもない。


 そんな、女としての武器も無いからこそ化粧などで盛って行くという方法を取ろうとしたのである。


 当初こそ『化粧をしたところで男性に見られないのであれば化粧をするだけ時間の無駄じゃない?』だとか『毎日毎日よくやるよね。 私は面倒くさがりだから一週間くらいで化粧して登校するのはリタイアしちゃった。』や『こんなんを社会人になると毎日するのがマナーになるんでしょ? 考えただけで恐ろしい』などと言われたものだが、毎日化粧をして行くことによって化粧の腕が上がっていき、目に見えて自分の顔が綺麗になっていくのが楽しくて、気がついたら私は綺麗になるために化粧をするのではなく、化粧が好きだから化粧をするようになっていた。


 そして、そこからネイルやファッションなどにも興味を持つようになり、結果ギャルと言われるようにな見た目になったのである。


 それは女性としての武器ではなくて私が好みの化粧にファッションをしているだけであり、いわばどこまで行っても趣味でしか無いのである。


 それでも、だからこそクロード様にはこんな私を好きになってほしいのだ。


 ではどうすれば良いいのかと言われれば何も思い付かないわけで、だからと言ってクラスメイトたちのようにガッツくのは私では無いと思うし……。


 そんな事を思いながらあれやこれやと自分なりにアイディアを出してはあーでもないこーでもないと試行錯誤を繰り返していると、気がつけば放課後になっていた。


「あれ? 帰らないのか?」

「うんにゃ、なんか考え事してたらこんな時間になってただけで、今から帰るつもり……へ? く、クロード様……? ……なんで?」


 そして、流石にそろそろ帰らないと日が落ちて暗くなると思い急いで帰えらなきゃと帰る準備をしようとしたその瞬間、私は誰かから『帰らないのか?』と声をかけられて、今帰るところだと返事をしようといた所で気づく。 どう考えても声質からして男性であると。


 そしてまさかと思い声のした方へ振り返ってみるとそこにはクロード様がいるではいか。


 しかも側仕えであるニーナも、世話係であるジュリアンナもおらず、クロード様一人である。


 その事に気づいた私はただでさえクロード様に話しかけられて心臓が爆発しそうなほど緊張してしまうのだが、今私はクロード様と放課後の夕焼けに染まった教室で二人っきりなんだと思うともう死んでしまうのではないかと思えるほど緊張でどうにかなってしまいそうである。

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