第98話 そして好きになってほしい

 そして私はそこまで興味がないという事をミリアに告げる。


 興味がないと言えば嘘になるし、クロード様と付き合う事ができれば、それこそ結婚をしたくないかと聞かれればしたいに決まっている。


 しかしながらクラスメイト達のようにまるで盛った動物のように目をギラつかせて何がなんでもクロード様を攻略しようとするのはむしろ逆効果では? というのが本音である。


 やはりそう思う一番の原因は、同性である私でさえクラスメイト達が餌であるウサギが目の前にいる猛獣のように見えて怖いと思ってしまう事であろう。


 果たしてそんな彼女達をクロード様は異性として見てくれるのだろうか?


 私も気をしっかり持たないとあちら側に行ってしまいそうで、常に気をつけて生活をしなければならない。


 そしてミリア含めてクラスメイトたちは今現在、目の前にできた大きな壁を登って越えようとしているのであって、私は登らずに他の方法でもってスマートにその壁を越えたいのだ。


 そんな私考えなど知る由もないミリアは、私の『そこまで興味がない』という答えを聞いて信じられないというような表情をしていた。 そして実際にそう思っているのだろう。


 私だってミリアの立場であればそう思う。


 そもそも同じクラスに同年代の男性がクラスメイトとしているという事がどれほど奇跡であるかという事を考えてみれば、そう思うのも当然であろうし、ガッツかない私の方が異端である事は間違いないというのも理解している。


 しかしながら考えてほしい。


 目の前に反りたつ壁を攻略する方法は、本当に越えるだけなのだろうか? 


 迂回したり穴を開けたり、地面を掘ってトンネルを作ったりと色々方法はあるはずである。


 そしてみんな前ならえで同じような方法で目の前の壁を乗り越えようとした場合どうしても大多数の内の一人でありクロード様へアピールするという事を考えた場合は悪手では無いのか? と私は思ったのである。


 そう思った時から私はクロード様へがっつくのは止めて、私らしい攻め方をする事を考えるようになった。


 そもそもがっつかないというだけでクロード様から見た場合は私という存在が目立つはずである。


 正直に言えばがっつきたい衝動を必死に抑えているだけで、今もなお他のクラスメイト達と比べて遅れ始めているのではなかろうかと不安で仕方がないのである。


 それらをグッと我慢して私という一人の人間を見てほしい、見つけてほしい、そして好きになってほしいからこそ頑張れる。


 でも実際、私らしさを出したところでそこからどうクロード様にアピールして良いか分からずに一人もがいているのである。

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