第93話 クロードだったら良いなぁ

 自分がいつの間にか眠っている事に気がつき、目が覚めた時は流石にクロードに対して失礼過ぎると思い跳ね起きると、私はいつの間にかベッドの上で眠ていた。 当然布団もかけられており、リビングから誰かが私をこのベッドの上へと運んでくれて布団までかけてくれたのであろう事は一目瞭然である。


 そしてその人物がクロードだったら良いなぁ、などと思ってしまう。


 というか、私をここまで運べる者などこの別荘にはクロードしかいないだろう。 流石にメイド数人がかりでここまで運ばれたとは思いたくない。


 というわけで私はここまでクロードによって運ばれたのである。


 そう思うとなんだか胸が苦しくなると共に、同時に幸福感が私の身体を満たしていく。


 しかしながらいつまでもベッドの上にいるわけにもいかず私は後ろ髪を引かれながらもベッドから降りるとリビングへと向かう。


 その道中、廊下から差し込む日の光の高さからも今現在の時刻は昼ごろである事がわかる。


 しかしながらこうしてリビングへと歩いていると『クロードの別荘の内装を知っているのは学園の在校生の中でも私だけである(クロードの側仕えであるニーナは除く)』という事にえも言えぬ優越感を感じてしまう。


 本来であればこんな感情はよろしくない感情である事だと感じないようにするのであろうが、今この時だけはその優越感に浸っていたい。


 そして私はそんな事を思いながらおそらくクロードがいるであろうリビングへと向かう。


「お、やっと起きたか。 そろそろ昼食を取るところだから起こしに行こうかと思っていたところだよ」


 そこには私の予想通りソファーに座ったクロードがおり、私に優しい声音で今から起こしに行くところだったと声をかけてくれる。


「お、怒らないのかしら? 私は貴方と話している最中に眠ってしまっていたのよ?」

「そんな事で怒ったり腹が立つほど俺は器が小さくはないつもりだし、むしろ何故怒らなければならないのかすら分からないんだが? 分からないんだから怒りようもないだろう?」

「そ、それはそうかもしれないけれども、流石に失礼な行為をしてしまったと私は思うから謝るわ。 御免なさい」


 そしてクロードは私が眠ってしまった事については何も怒っていないと言ってくれるのだが、それでは私の気が済まないので流石にその事について謝罪をする。


 「それで、その……あの……私をベッドまで運んでくれたのはクロードかしら?」

「あぁ、そうだけど? 流石にメイドがいるとはいえ女性である為男性である俺が運んであげた方が良いだろう。 もし男性に運ばれるのが嫌だったとかであれば謝るが──」

「そ、そんなつもりで聞いたのではないわよっ。 運んでくれた方にお礼を言わなければと思っただけよっ! ………その、運んでくれてありがとう……」

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