第86話 寄生虫
そして、これは即ち俺に『男性としての価値』が無くなった事でもあるという事に気づいてしまう。
「ま、待てっ。 何でそんなに冷たい態度が取れるんだっ!? 俺とお前の仲じゃないかっ!! これでは俺の価値が男性という所しかなく、男性でなくなった今俺には存在価値がないみたいではないかっ!?」
このままではまずい。 間違いなく俺は捨てられる。 それだけならばまだ良い方である。 このババアの言い振りでは、このままだと間違いなく俺は今までババアへ行って来た数々の詐欺まがいの行為によって罰せられるだろう。
そうなっては不味いので俺はプライドを捨ててババアに縋る。
プライドだけでは食べていけない事くらいは流石の俺でも理解している。
理解しているからこそ俺は今までプライドのために俺をそばに置く女性たちを馬鹿にして生きてきたのだ。 その事に関しては痛いほど良く分かっているつもりである。
「はぁ? 何を言ってんのかしら。 貴方と私の仲? それはただ単に私の金と権力という甘い蜜を吸い尽くしにきた寄生虫とその宿主という関係以外に何があるというのかしら? そういう対応をしてきたのは他でもない貴方だからこそ自分でもよく分かっているのではなくて? そして男性という唯一の利点が無くなった上に養分を詐欺まがいな行為で吸い尽くす事しかできない寄生虫は私の周囲から追い出すに決まっているじゃない。 貴方だってお腹に寄生した寄生虫は虫下しを飲んで一方的に追い出すでしょう?」
言わせておけば寄生虫だ何だと好き勝手言いやがって。
そう怒が俺の中で噴き上がってくるのだが、ここで怒りに任せてキレたところでむしろ悪い方向にしか動かないためここはグッと堪える。
「ぐっ、いや……しかし俺とお前との間には確か娘がいるはずだろうっ!? 娘が可哀想じゃないのかっ!?」
「今まで娘に会いたいという理由でここへ戻って来た事が無いくせに良く言うわね。 会う時はいつも金の無心だったものね。 それも私から爵位と弁当屋以外の全てを奪ってからは今まで音沙汰が一切私たち親子に会いに来ないどころか金銭的援助すらして来なかった癖に今更私の娘をダシにしたところでむしろ逆効果しかないわよ?」
そして俺は何とか追い出されないように、そして訴えられないように娘をダシに責めてみるのだが、むしろ逆にババアを怒らせるだけに終わったようである。
「とりあえず、憲兵を呼んであるから大人しく捕まってもらいましょうか。 言い訳は憲兵にでも話してちょうだい。 あと、逃げられるとは思わない事ね」
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