第82話 意味が分からない

 そう私が言うと、ダグラスはこの世の終わりのような表情をして私を見つめてくるではないか。


 流石のダグラスも今この状況で私がいなくなってしまうという事は、女体化した身体を元に戻せる者がいなくなるという事でもあると気づいたようである。


 しかしながらダグラスの考えは正しいけれども間違っていると言えよう。


 そもそもダグラスを女体化をさせたのは私ではなくてご主人様からいただいた謎の液体であって私が女体化させた液体を作ったわけではない。


 そのため私に助けを求めた所で女体化したダグラスを元に戻す事はできないのだが、それでも私がご主人様未来の旦那様へ『ダグラスを元の男性へと戻してくださいとお願いすれば、もしかしたらご主人様未来の旦那様が治してくれるかもしれない。


 だから私に期待するのは間違っているが合ってもいるというわけである。


 とは言ってもいくらダグラスから懇願されようとも私がご主人様未来の旦那様へ元の性別である男性へと戻して下さいなどとは万が一にも言う事は無いし、もし私がダグラスの性別を男性へ戻すことができたとして絶対に性別を戻す事はない為、結局のところダグラスはもう女性としてしか生きていくしかないということである。


 しかしながら女性として生きるといっても今まで男性として働かなくても好き勝手に生きて行けた今までと違って、これからは女性としてしっかりと働いて生きていかなければならないというのは私が想像する以上に過酷な未来が待っているだろう。


 それこそダグラス本人は死ぬことよりも辛い生き地獄となるであろう事が想像できたからこそダグラスは今私に縋り付いてきているのだ。


 あんなに偉そうな態度で女性を、自身が豊かに暮らせる為の道具としか考えていないようなクズにはまさにお似合いの結果、因果応報であろう。


「頼むっ!! 帰るのはせめて俺を元の男性に戻してからにしてくれっ!!」

「は? 嫌に決まってるじゃないですか。 それではお疲れ様でした」


 そして私はなおも縋ってくるダグラスを振り解いてこの場所から消えるのであった。


 



 意味が分からない。


 飲んだら性別が変わるとかいう液体があるだなんてのは今まで聞いた事もない。


 流石にこのまま女性というのは色々とまずい為俺に液体を飲ませたダークエルフへ、元の性別である男性へ戻して欲しいとこの俺が頭を下げているにも拘らず、無視してどこかへ行ってしまったではないか。


 明らかに不敬すぎるその態度に俺は怒りが込み上げて来る。


 女性の癖に男性へそんな態度を取ってただで済むと思うなよ。 俺を見下しコケにした事を絶対に後悔させてやる。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る