第75話いくら何でも夢見がちだろう
そもそも父親だけを排除するのならば簡単であるのだが、父親にご執心の母親をどうにかしなければならず、むしろ母親の目を覚まさせる方が重要だろう。
その事が余計に今回の問題解決の難しさを跳ね上げてしまっている。
これではせっかく見張ってくれているダークエルフたちも
そんなこんなでクラスメイトを糞みたいな父親から助け出すために俺は色々と案を練っていると、ある一つの方法を思いつく。
「ジュリアンナ」
「……ご、ごめんなさい。 婚約者でもなければ彼女でもないただのクラスメイトがここに居て良いわけないわよね。 こないだ雨の日の好意を思い出して私はクロードへ甘えてしまっていたようね。 もう大丈夫だから私はここから出て行くわ」
「ちょっと待てっ、ジュリアンナっ!! いいから好きなだけここで泊っていけっ! 俺はお前の味方だから苦しい時くらいはいくらでも甘えてくれて構わないからっ!」
「ク、クロー……ッ。 …………わ、分かったわよ。 …………あ、ありがとう」
「困ったときはお互い様だろう。 気にするな」
そして俺はもう大丈夫だから安心してほしいと思い、作戦を話す事は出来ないのだがジュリアンナを勇気づけようと声をかけてみる。
しかしながら今のジュリアンナはかなりの鬱モードに入っているらしく、俺が話す前に俺の住んでいる別荘から出て行くというではないか。
流石にこの状態のジュリアンナを一人で放り出すと最悪自殺しかけないと思ってしまうレベルで精神的に病んでいるのは見て分かる為、流石に一人外へ放り出す事は出来ないと引き留めるのだが、その瞬間ジュリアンナの表情が恋する乙女のソレになって濡れた瞳で熱の籠った視線を向けて来たような気がするのだが、気のせいだと思いたい。
その表情や視線も一瞬であり一秒にも満たない為、きっと俺の見間違いだろう。
そもそも今まで唯一関わってきた男性である父親によって苦しめられてきて男性が苦手になっているのだ。
そんなどこぞのチョロインのように少し手を差し伸べただけで恋に落ちてしまうなんて事はいくら何でも夢見がちだろう。
しかしながら俺の気持ちはジュリアンナに伝わったらしく、この別荘から出て行くという考えは無くなったようで一安心である。
そして俺はニーナにジュリアンナを任せて自室に入り鍵を閉める。
勿論、鍵を閉めただけではニーナには何の意味も無いため、そこから更に魔術で音も遮断できる見えない壁で密室にしていく。
そして、準備が整った所で俺は『パンパンッ!』と二回手を叩く。
「お呼びでしょうか? ご主人様」
すると俺の陰からダークエロフ、ではなくてダークエルフのリリアナが現れると、俺の前で頭を垂れ、俺の命令を待つ。
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