第72話 静かな朝
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朝。
俺は寝汗を流すためにシャワーを浴びて私服へ着替える。
その時に鏡を見ながら髪の毛をセットするのだが、何回見てもこの顔はイケメンであるとつくづく思う。
ただでさえ男女比率がバグっており、男性が女性と比べて四十人に一人しかいない世界。 しかもその僅かな男性も帝国が管理している区画で暮らしている者が大半であり、その事からも実質的に男性はまず街にはおらず女性ばかりとなっている。
そんな、男性なんてまず見ないような環境の中で俺のようなイケメンが帝国が管理している区画ではなくて男女共用スペースで暮らしているのは女性サイドからすればとんでもなく奇跡的な事なのだろう。
自分で言うのも何だが、マジでイケメンだと自分でも見惚れてしまう程なのだから、これが男女逆転した世界で考えるといかに奇跡的な事であるのかが窺えてくるというものである。
そして、当然俺の住む別荘はすでにこの街に住む女性たち全員に知られているのだが、俺の別荘に押しかけて来る女性たちは一人もおらず、今日も静かな朝を迎える事ができ、良い休日の始まりであると言えよう。
ちなみになぜ女性たちが俺の別荘へと押しかけて来ないのかというと、この帝国の法律が関係している。
その法律とは『男性の住む場所に押しかけた場合、押しかけられた男性の許可が無い、又は男性側から押しかけた事に対して許可が降りてこなかった場合は二十年の懲役、最悪無期懲役が下される』のである。
もちろん、男性が男女共用スペースで住んでいる場所の範囲五百メートル位内は監視魔道具が至る所に設置されており男性を守るのと同時に男性側の虚偽の申告による冤罪から女性を守っていたりする。
因みにこの場合は偶然女性が通ったりなどといった場合に有効であり、基本的には審問官によって虚偽の申告は見抜かれる為冤罪は前世と比べて殆ど起きないのだが、それでも冤罪があるところを見ると人が人を裁く以上は冤罪というのは永遠の課題でもあるのだろう。
そして、男性の住んでいる場所へ押しかけただけでこの判決は重すぎるのではないか? と思うかも知れないのだが、逆に言えばここまで重くなるまでの過程は当然あり、そしてここまで重くしなければ女性たちは押しかけて来たということでもある。
そんな話はさておき、何が言いたいかというと今日も俺は何事もなく一夜を過ごし、そして静かな朝を迎える事ができたという事である。
そして、静かな朝を迎える事ができたという小さな幸せを噛み締めなが庭に出て軽く運動でもしようと玄関の扉を開けると、玄関の端の方で体育座りをしながら座っている女性が目に入ってくるではないか。
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