第68話 茶番

 恐らく、というか間違いなく俺の実力を確認した後から自分の実力を俺に合わせて、武術の授業の時は俺とペアになる確率を上げようという魂胆がダダ漏れで丸分かりである。


 俺本人がいる前だから少しは淑やかな風を装ってバレないようにするとかいう事をして少しでも俺に良い印象を与えようとは思わないのだろうか? とは思うものの逆の立場で考えてみると確かにこうなってしまうのも致し方ないのかもと思ってしまう。

 

 前世の男子校に突如超絶美少女のお嬢様が舞い降りたらと想像してみれば、彼女たちの反応の方がまだ抑えられている方だと思えてくる。


 ちなみに前世で男子校に通っていたという大学時代の友人曰く食堂の四十五歳のおばちゃんが可愛く見え始め、男子校のアイドル的な存在になっていたそうである。


 結局、異性の数が極端に少ない閉鎖的な環境下で会える異性というのもがもたらす影響は自分が思っている以上に周りに与えていると思った方がいいだろう。


「ではクロード、修練場の中央まで一緒に来てもらおうか。 なんなら一緒に手を繋いでいくか?」

「いえ、一人で行けるので大丈夫です」

「そうか、残念だ。 じゃぁ手を繋いで行こう」


 あれ? こいつ言葉が通じないのかっ!?


「いや、だから大丈夫ですって」

「大丈夫なのだろう? だったら別に手を繋いで中央まで向かっても良いじゃないかっ」

「こ、言葉が通じねぇっ!? ほら、茶番はそれくらいにして早く行きますよっ」

「まったく、恥ずかしがりやなんだなっ!」

「もうそれで良いよ」


 とりあえずこのままパメラ先生に合わせてしまうと埒が明かないので、このまま無視して中央へと向かう。


「まったく、君という奴は。 結婚したら亭主関白系なのかな? それもまた良いじゃないか。 私は一向に構わないぞッ!!」

「あ、はい。 そうですね。 まぁ、パメラ先生には申し訳ないのだけれども俺は結婚した場合は亭主関白にはなりたくないですけどね」

「亭主関白じゃなくても良いっ!! どんなクロードでも受け入れるだけの覚悟はできているぞっ!!」

「あ、はい。 大丈夫です。 間に合ってます」

「まったく……クロードはもう少しがつがつしても良いと私は思うぞ? それでは、始めようか」

「そうですね。 早くこんな茶番は終わらしてしまいましょう」


 そして二人で喋りつつ歩いて行き修練場の中央へと到着する。


 中央に着いたということは後はやる事は一つであり、先ほどまで茶番を繰り広げていたパメラ先生も真剣な表情に変わる。

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