第63話 天竺はあったのです
女性とは明らかに違う筋肉質で引き締まった上半身に、少しだけ照れており頬を赤く染めて羞恥心から顔を背けるその反応。
それら全てが私の中に今まで感じたことのない感情を呼び覚まし、言いようのない高揚感や多幸感が一気に押し寄せてくるではないか。
あぁ、天竺はあったのです。 そう、今この場所こそが天竺なのです。
それこそ私一人だけでは勿体無いとすら感じるくらい、この感動を誰かにシェアしたいようなそんなことすら感じてしまう。
だからこそ男性は六人もの女性と結婚することが許されているのだと私はこの時初めて理解した。
確かにこの多幸感を独り占めするのは、一人では抱えきれないと言わざるを得ない。
そのちょうど良いバランスがきっと六人なのだろう。
そんな事を思いながら私はふと気になった為ニーナさんを横目で眺めてみる。
私と同じく天竺へと訪れたニーナさんが今、一体どんな表情をしているのか気になったのだ。
そして私はそれとなくニーナさんの方向を見てみると、鼻の両穴にティッシュを詰めながらクロードの上半身を、『はぁっ、はぁっ、』と息は荒く、目をバッキバキにしながら眺めているではないか。
その姿に私はかなりドン引きしながらも一つ疑問に思ってしまう。
なぜニーナは鼻の両穴にティッシュを詰めているのかという事である。
しかしこの疑問はすぐに解決した。
ニーナの鼻に詰められたティッシュが赤く染まり始めたからである。
そう、ニーナは興奮しすぎて鼻血を出すことを予め予測していたのだ。
その事が分かった私はさらに引いてしまうのと同時に、ニーナはクロードの側仕えでもある為生活の知恵なのだろう事が分かってしまう。
きっと、ニーナはニーナで大変なのだろう……それこそ、自分の胸の中にいる欲望という野獣を抑え込むのにはかなりの忍耐力と精神力が必要になってくるであろう。
「どうした? 着替えないのか?」
そんな事を思っているといつの間にかクロードは着替え終わっており、ニーナは鼻からティッシュを抜いており何食わぬ顔で着替え始めているではないか。
「き、着替えるわよっ! 少し待ってなさい」
そして私は『クロードに見惚れていた』とはとてもじゃないが言えず、それを悟られまいと少しだけキツイ返事を返してしまい少しだけクロードに対して申し訳ないと思ってしまうのであった。
◆
いや、正直眼福だったとしか言いようがない。
いくら男女比が一対四十といえども異性の生着替えは早々見れるものではないし、自分から見たいと言えるわけもないので、ふって湧いたこの奇跡に俺は神に感謝した。
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