第58話 男子更衣室
「では、早速行きましょうか。 私が前を歩きますのでその後をついてきてください」
「あぁ、分かった」
そしてジュリアンナは目的の場所まで前を歩いて行くので後ろからついてきてほしいと言うので、俺はそれを了承してついて行くのだが、五百メートルほど進んだあたりでジュリアンナは急に止まってしまうではないか。
「どうしたんだ? 武術の授業で使う衣服でも教室に忘れたのか?」
「ち、違うわ……。 もっと大事で初歩的な事を失念していたわ……ど、どうしようかしら?」
流石に小等部からこの学園に通っているジュリアンナが武術の授業をする場所が分からず迷子になってしまったとは考えられないので、あるとすれば授業用の衣服を教室に忘れてしまったか、そもそも衣服そのものを忘れてしまったのかしかないと思い、声をかけてみる。
しかしながらジュリアンナは俺の問いかけにゆっくりと首をふり、武術の授業用の衣服を忘れたのではないと言うではないか。
それと共に衣服を忘れるよりも大事であり初歩的な事だと言う。
はっきり言って授業で使う衣服を忘れることよりも大事で初歩的な事が何なのか、俺には分からないので今一度聞く事にする。
「武術の授業で使う衣服よりも大事で初歩的なことって、いまいちピンとこないんだけど? 一体何を忘れたというんだ?」
「アナタね、何も違和感を感じないの? これはあなたの安全に関わる事なのよ? このままでは下手すれば授業どころじゃなくなってしまうでしょうし、クロードも怪我をしてしまう可能性だってあるわ。 むしろクロード以外の女子達が大怪我をし兼ねないような事よ」
そしてジュリアンナは俺に関係する事であり、下手すれば俺を含めて大怪我をしてしまい授業どころではなくなってしまうと言うではないか。
いや、はっきり言って全くもって分からない。
そんな俺を見てジュリアンナはまるで出来の悪い教え子をみるような視線を向けながら深い溜め息を吐くではないか。
人の顔を見て溜め息をつくのは失礼だと俺は思うぞ。
「全く、その危機管理能力の低さでよくここまで生きて来れたわね」
「それは誉めているのか?」
「誉めているように聞こえるかしら?」
「いや、聞こえないな。 というか何に気づいたのか早く教えてくれよ。 教えてくれなきゃ対処のしようもないだろうが」
「分かったわよ。 あなた、その手に持っているものは何かしら?」
「次の武術の授業できる衣服だが?」
「では、その衣服は一体どこで着替えるというの?」
「いや、普通に男子更衣室………まさか、男子更衣室がないのかっ!?」
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