第59話 いい事を思いついた

 いや、まさか、そんな事ってあるのか? 男子が入学すると分かっていて流石に何もしていない事はないだろう……ないよな? 


 そう思いながらジュリアンナに確認してみる。


「そうよ。 この帝国立帝都魔術学園には男子更衣室はないわっ」


 そしてジュリアンナは俺の僅かな期待を打ち砕くように力強く言い切るではないか。


「いやいやいや、え? まじ?」

「マジもマジ、大マジよ。 むしろ昔はあったみたいなのだけれども男子が全く入学して来なくなて数十年もすれば無くなっていてもおかしくはないわよね。 というかそもそも数百年前ならばいざ知らず、前々から男性が極端に少ない為男性専用のものは更衣室もトイレもその他諸々、今現在は無いわね。 トイレだって学園の校舎からは離れた一角にある女子トイレを男子トイレとして使っているのでしょう? それでなんで男子更衣室はあるものだと思ったのかしら?」

「いや、トイレのように更衣室もどこか用意してくれているものだと思っていたんだが……。 あと、教師陣が何人もいてそんな初歩的なミスに気付けないはずがないと思っていたのもある」


 流石に男子更衣室がないとしても、だからこそ別の場所を用意しているものだと思うだろう、普通は。


 しかしながらジュリアンナ曰く男子更衣室は無いと言うのでどうにか打開策を考えなければならない。 だがいくら打開策を考えてみてもそもそも入学してきたばかりで、まだこの学園の事はあまり分かっていない俺が考えたところでいい案など思いつくわけがないわけで。


「どうしようか……一度職員室に行ってからカレンドール先生にどうすればいいか聞いてみるって言うのはどうだ? 流石に男子更衣室用の教室を用意していないと言うわけがないと思うから伝え忘れている開けだと思うぞ?」

「それじゃダメよ……っ」

「いや、何でだよ」

「それじゃ授業に間に合わないわ」

「少しくらい遅刻しても俺は構わないんだが?」

「ダメよっ! 私のせいでクロードを遅刻させるだなんて、クロードが良くても私が許さないわっ!! そもそも私がクロードの事をカレンドール先生から頼まれているわけだし、今回の事も事前にカレンドール先生に聞いていればこんな事にはならなかったわっ!!」

「いや、まぁそうだけど、だからと言って俺はジュリアンナを責めたりしないからさ、職員室に聞きに──」

「そ、そうだわっ!! いい事を思いついたから少し着いてきてちょうだいっ!!」


 そしてジュリアンナな何かしらの打開策を思いついたのか俺の言葉を遮って、着いてこいと言うではないか。

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