第57話 前科があるので尚更である


「何もなにも次は武術の授業で移動しないといけないだろう? 恐らく外にある修練場だとは思うんだが、確信は持てないし色々と教えて欲しいんだが?」

「あ、そ、そうね。 私がぼうっとしてしまいクロードに迷惑をかけてしまうところだったわね。 その件については謝るわ。 ごめんなさい」


 耳に息を吹きかけられたジュリアンナは一瞬激昂するものの、何故俺がそうしたかという理由を聞くと素直に自分の非を認めて謝罪するのだが『で、ですがっ! 次からは耳に息を吹きかけるのは止めてちょうだいっ!!』と、怒られてしまう。


 まぁ確かに、好きでもない、なんなら男性が嫌いだという女性に対して男性である俺が耳に息を吹きかけるのは、前世ならばセクハラどころの騒ぎではないだろう。


 その点に関しては以後気を付けるとしうよう。 耳に息を吹きかけるのが駄目ならば首筋に水でも垂らしてやろうか。


「あぁ、分かったよ。 俺も悪かった。 次からは呼んでも反応ない時は耳に息を吹きかけるの方法はせずに別の方法で試してみるよ」

「…………なんか怪しいのだけれども分かってくれたのならばそれで良いわ。 今回は私も悪かったわけだし、クロードも色々と大変そうだから目を瞑ってあげるわ」

「何故最後の方は側仕えメイド兼クラスメイトとして完璧な私を見て言うのでしょうか? 理解に苦しみますね」

「そうね、自分の胸に手を当てて考えてみなさい」


 いいぞジュリアンナ。 もっと言ってやってくれ。


 せめて夜這いだけはしないように言い聞かせてくれればと、つい思ってしまうのは仕方のない事だろう。 実際過去に一度前科があるので尚更である。


「では、行きましょうか。 ちなみにこの武術の授業なのだけれども運動用の衣服に一度着替えないといけないのだけでどもクロードは着替えはちゃんと持って来ているのかしら?」

「あぁ、それならこの学園に来ることが決まった時にある程度説明してもらっているから大丈夫だ。 ちゃんと入学前に学園指定の運動用の衣服は購入しているし今日は忘れずに持って来ているぞ」


 そしてジュリアンナは、俺の後ろで『胸に手を当てて考えて……あぁ、クロード様っ!! 私は今クロード様の思いで満たされていることがわかりますっ!! 他の者など入る余地が無いくらいにクロード様でいっぱいですっ!!』などと言っているニーナの事は無視して武術の授業では別途運動用の衣服に着替える必要があるので忘れず持って来ているか確認して来たので俺はちゃんと持ってきたと言いながら運動用の衣服が入っているトートバッグを見せる。

 

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