第56話 替のパンツ


「あ、ありがとうございます。 カレンドール先生」


 しかしながら一応今回はカレンドール先生に表面上は許されたように見えるのだが、内心ではどう思っているのか分からない為これからはより一層気を付けなければならないだろう。


 それにカレンドール先生が怒るのは俺を思っての事であり、前世で言うところの女子が親のいない家に男子高校生に連れ込むようなものなので、それを考えれば少しキツイ口調で釘を刺すくらいの事はするだろう。


 自分では大丈夫と思っていても前世の男子高校生の性欲を舐めてもらっては困るからな。 何かあってからでは遅いのである。


 その男女が逆転した場合だと思えばカレンドール先生がここまで真剣に怒る気持ちも、確かに理解できる。


「う、うむ。 クロードも自分が男だという事を忘れるな。 あと私以外の女は全員狼だと思え。(ハッ!? 今私クロードきゅんに感謝されたっ!? ならば私もクロードきゅんが場所を通る場所で訳あり気味に傘も差さず雨に打たれればお持ち帰りされる可能性があるという事ではっ!? いや、これはむしろクロードきゅんから私への遠回しのアピールの可能性も無きにしもあらずっ!! 直接私に告白するのは恥ずかしいから一度同級生を使って『こうすればお持ち帰りしてあげるよ』という精いっぱいの意思表示ではっ!?)」

「は、はい。 分かりました。 以後気をつけます」

「あぁ、分かれば良いのだ。 分かれば(く、クロードきゅんが『分かりました』って言ってくれったっ!! こ、これってやっぱり『分かりました。 雨でカレンドール先生が濡れている姿を見たらお持ち帰りさせていただきます』って事よねっ!? そ、想像したらちょっと興奮してきたわね。 何があるか分からないから万が一クロードきゅんと学校内で一線を越えた時用に替えのパンツ持ってきておいて良かった……)」


 そして俺たちはカレンドール先生から解放されて自分の席へと向かう。


 その間カレンドール先生から熱い視線を感じたような気がしたのだがきっと俺の事を大人として道を踏み外さないように本当に心配してくれているのだろう。


 本当に良い先生だと俺の中でカレンドール先生の株が上がるのであった。





「ジュリアンナ」

「…………」

「ジュリアンナっ」

「…………」

「……ふーっ」

「ひゃわぁっ!? な、何をしているのよっ!?」


 朝は少しだけバタバタしたのだがそれ以降は特に問題はなく朝のホームルームから一限目の授業も終わったのだが、次の授業は武術の授業のため教室から出なければならず案内してもらおうとジュリアンナに声をかけるのだが、心ここに在らずといった感じで俺の声が聞こえていないみたいなので、ジュリアンナの耳に息を吹きかけるとやっと気づいてくれたようである。

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