第54話 きっと気のせいだろう
あれ? 俺の耳に実際に聞こえた二人の言葉が、聞こえてきた言葉とその内容が合わないような気がするのだが気のせいだろうか?
いや、きっと気のせいだろう。
ここで深く考えたところで結局分からないものは分からないような気がするので、ここは無視して先に進むのが正解だろう。
それに俺の右腕の袖を未だに握っているジュリアンナも、俯いているその隙間から微かに見える顔色も地味に悪くなてきているような気がするので早くここを抜け出して自分のクラスへと向かう方が良いだろう。
そう判断した俺は件の女生徒に別れを告げて自分のクラスへと向かう。
その道中はやはりというかなんというか当然のように女生徒たちの視線に晒されながらなんとか俺たちは自分のクラスへと到着する。
そして自分のクラスの扉を開け、一歩中へ入ると、教室の中は廊下以上に殺気立っており、ピリピリと空気が張り詰めているではないか。
恐らく、というか間違いなく今日廊下で出会った少女と同じような噂をクラスメイト達はどうやって仕入れたかは分からないのだがいつの間にか仕入れており、そして全員が同じように勘違いしているのだろうという事が窺えてくる。
「これはこれはジュリアンナさん。 これは一体どういう事でしょうか? 先生、何も聞かされていないんですけど? これって不純異性交友という奴だと先生思うんだけど、気のせいかしら? ぜひ、みんなにも分かりやすく説明してほしいな?」
そして教室に入ってきて早々俺たちの担任であるカレンドール先生がジュリアンナに向かって『これはどういう事なのか』と説明するように要求してくるではないか。
その表情こそ笑顔なのだが、その笑顔の下で静かに怒っている事が伝わってくる。
その事からも先生を含めてこの教室にいるクラスメイトたちは間違いなく廊下で出会った女生徒と同じような勘違いをしている事が確定する。
特にカレンドール先生からしてみれば『ジュリアンナなら大丈夫だろう』と信頼して俺の案内係を任命したにもかかわらず、その翌日には同じ馬車で一緒に登校してきたのだからその怒りも他の生徒より上だろう。
「カレンドール先生、ここは
そんなカレンドール先生へニーナが前に出ると何故か俺の側仕えである事を強調しながら昨日何があったか説明しても良いかと確認する。
その時『俺の側仕え』の部分でカレンドール先生の右眉がピクピクと動いてかなりイラついていたような気がしたのだがカレンドール先生は大人でありこの学園の教師でもある人なのできっと気のせいだろう。
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