第53話 凸と凹が交わる箇所

「仕える者の思考を読み、先回りしてお世話をする事がメイドの、それも側仕えメイドの嗜みでございます。 あと、クロード様の好みを教えていただければいつでもイメチェンをさせていただきますので何卒宜しくお願いいたします」

「いや、何その能力? てか別に俺の好みに変わって欲しい訳ではないからなっ? 今のニーナで十分だからっ! てか俺の思考を覗く事を止めようとは言わないんだなっ!?」

「はて? なんの事を仰っているのか私には分かりませんが、ご主人様の好みは私だという事でよろしいでしょうか? ではいまから婚姻届け……はまだ法律上無理なので義母であるスフィア様へ婚約の承諾をいただきに行きましょう」


 コイツ絶対に聞こえているし俺の言った言葉を理解しているにも関わらずいけしゃあしゃあと分からないフリで誤魔化そうとしやがって。


 というかボケなのか本気なのかが分からないから本当に質が悪い。


「いや待てっ! とまれっ!! どこから突っ込んで良いのか分からなくなるだろうがっ!!」

「そんな、クロード様。 どこからだなんてそんなの凸と凹が交わる箇所を皆様が見ている前で言えというのですか? しかしながら私も覚悟はできております。 クロード様が私に突っ込む場所、それはオマ、むぐむぐむぐっ!?」

「俺が悪かった。 頼むから黙ってくれ」


 これでは俺の方が生き恥を晒しているようなものではないか。


 取り敢えずこれ以上ニーナに暴走されてはたまったものではないので致命的な内容を口にする前に俺の空いている左手でニーナの口を押えて強引に黙らす。


 しかしながら何で俺が謝らなければならないのか。 人生は理不尽の連続であると再確認してしまう。


 そんな事を思っていると俺の手の平をニーナが舐めてくるではないか。


「ひっ!?」

「分かりました。 今回はクロード様の手の平を舐めれたので手打ちといたしましょう」

「いや、流石に汚いから止めろって」

「大丈夫です。 クロード様の手の平は汚くなんかありませんから」

「いや……そういう事じゃなくてだな…………まぁ、ニーナがそれで良いならもうそれで良いよ。 なんとなく何を言っても無駄な感じが伝わって来るし。 あとわざわざ俺に話しかけてくれた君には変なごたごたに巻き込んでしまってごめんな? 一応頭を撫でたから許してくれると助かる。 それじゃぁっ」


 そして俺はニーナから渡されたハンカチで手の平を拭き、時間も時間な為朝のホームルームに遅刻しないよう目の前の少女から離れ、クラスに向かう事にする。


「あ、はいっ!! こちらこそ頭を撫でてくれてありがとうございますっ!(糞メイドが、邪魔してんじゃないよっ!!)」

「では、参りましょうかクロード様(獰猛チワワは分からないかもしれませんが、私はメイド兼クロード様の護衛ですので)」


 

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