第51話 羊の皮を被った狼
このことは瞬く間に学園中に広まっていき、俺が校舎内に入った瞬間にはその噂が本当かどう確かめる為に一目見ようと学園の生徒達が集まって来ていた。
そして俺たちはその集団がモーゼの様に割れた真ん中を歩いて行き教室まで向かうのだが、その道中のジュリアンナは恥ずかしいのか顔を右手で隠しながら俯き、それでは前が見えず歩けないので左手で俺の服の袖を掴んでいるのだが、その姿がまた噂に信憑性を持たせ、周囲の女性達に衝撃が走っていくのが、彼女達の表情から良くわかる。
ちなみにジュリアンナの耳は真っ赤に染まっており、あのジュリアンナがこんな初心な反応をされると何だか可愛らしく思えてくる。
そもそも袖を握られるのもかなりグッと来てしまう所があるのだがそれを言うとジュリアンナはどこかへ飛んで逃げて行きそうな為、俺はあえてその事を言わないでおく。
少しでも長くこの状態のジュリアンナの姿を愛でていたいというのもあるが、今ジュリアンナが俺から離れて一人になってしまっては他の生徒達から何をされるか分かったものではないというのもある。
「あ、あのっ!! 少しだけ良いでしょうかっ!!」
そんな中、一人の清楚系お嬢様といた見た目はおとなしそうな女性が俺たちの前に現れて道を塞ぐではないか。
その女生徒に対して俺の後ろにいたニーナが前に出てこようとしていたので、俺はジュリアンナに袖を握られていない方の手を伸ばして前に出るのを止めさせる。
そしてその一人の少女を周囲の女性とは固唾を飲んで見守っており、そして周囲の女生徒たちの想いをその小さな体で背負った少女の胸の前で組んでいる手は震えているのが見える。
そんなまるで小動物のような少女に対して刺激しないように俺はできるだけ優しく問いかける。
「うん、どうしたの?」
「あ、あのっ…………お二人は、その……一線を越えられたのですかっ!?」
「越えてません。 私がしっかりと監視させていただきましたので間違い無いです。 このジュリアンナとかいう女性は昨日傘も刺さずにうろついていただけで、そこを偶々通りかかったクロード様が目撃しいて保護しただけで他意はございません」
そして少女が俺に質問をしてくると、間髪入れずに俺の後ろで控えていたニーナが俺の代わりに答えてくれる。
「それとクロード様。 見た目に騙されてはいけません。 女性は羊の皮を被った狼であるという事をお忘れなく」
ニーナは少女に応えた後俺に周囲に聞こえない声で忠告を耳打ちしてくるのだが、どこかで聞いたことあるような内容だな、と思ってしまう。
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