第45話 まるで貴族みたい
◆
今私は公爵家であるクロードの別荘、そのお風呂に入っている。
そこには当然湯舟もあり、私は数年ぶりにお湯に浸かれる嬉しさからほんの少しだけテンションが上がっているのが自分でも分かる。
以前入ったのは確か私が小等部から中等部へと無事に上がれた時にお母さんと一緒にお祝いも兼ねて大衆浴場へ行った時以来である。
ちなみにその時が初めて湯船に浸かる体験もしたのだが、そのあまりの気持ちよさに今でも鮮明に覚えている程である。
その為シャワーに設置されている温度調整の魔具の使い方もはっきりと覚えている為悩む事無く適温えと調整する事ができた。
そもそも普段は水で身体を洗っている私からすればお湯で身体を洗える事だけでも物凄く嬉しいと感じてしまう。
そして今の私には雨に濡れて冷えた身体もあいまって、シャワーから出るお湯で身体を頭から洗うだけで心が満たされるようである。
お湯で身体を洗うって、まるで貴族みたい。 一応私も貴族なんだけどな……。
そんな事を思いながら私は身体の汚れをお湯で洗い流すと石鹸で身体を洗うと、そのまま頭も洗おうとしたしたその時、風呂場の扉が開く音が聞こえてくるではないか。
やはり表では私に甘い言葉を投げかけていたのだが、心の中はゲスな事を考えていたのか。
そう思うと『やっぱりな』と思うのと同時に何故か裏切られたような感情を抱いてしまう。
「期待していた所悪いのですが、残念ながら私はクロード様ではなくてニーナですよ」
「べ、別に残念がってなんかないわよっ!! むしろクロードだった場合は男性はやっぱり屑だと確証が持てる訳だしっ!? そうなったら躊躇う必要も無くなるわけだから思いっ切りぶん殴ってやるだけよっ!!」
しかしながら実際にお風呂場に入って来た者はクロードではなく、その側仕えのニーナという女性であった。
「まぁ、そういう事にしといてあげましょう。 あと、髪の毛を石鹸で洗うとごわごわになってしまいますのでこちらの、クロード様がお創りになられた髪の毛専用の『シャンプー』という名の液体石鹼で髪を洗う事をお勧めしまう。 そして、髪の毛を洗い終えた後はこちらの『トリートメント』というオイルを塗り、洗い落とした後に『コンディショナー』というオイルを使用する事を強くお勧めします」
「え? シャン、リン……え? 面倒くさいわね。 そんな面倒くさい事をするくらいならば石鹸で十分よ」
「いえ、貴女もこれを一度体験すれば分かります。 面倒くさがらずに絶対にやった方がいいですっ!」
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