第42話 よく耐えた





「ニーナ、ジュリアンナをお風呂に一緒に入ってあげてくれ」

「まったく、女たらしの主人に仕えるというのは大変ですね」

「何が望みだ?」

「休日、クロード様が起きたばかり、まだクロード様の体温が残っている寝具で二度寝の権利」

「…………一回だけだぞ」

「……畏まりました」


  そして俺はずぶ濡れのジュリアンナの身体を温めるべく先にお風呂に入ってくるようにと、風呂場まで誘導しており今ジュリアンナにはお風呂に入ってもらっている。

 

 しかしながら今日のジュリアンナは早退してしまうほど体調不良であるようだし、そんな身体で雨に打たれていたのだから既に風邪をひいてしまっている可能性だってある。


 こんな状態では流石に一人でお風呂を使わせるのはそれはそれで怖いと判断する。


 気がついたらお風呂で倒れてましたという事を防ぐためにも、そして万が一ジュリアンナが倒れてもすぐに対応できるようにニーナもジュリアンナと一緒にお風呂に入ってもらうように言うのだが、ニーナは俺がジュリアンナをお風呂場で一人にしたくない事を知っているのであろう。 ここぞとばかりに対価を要求してくるではないか。


 一瞬迷いはしたものの、俺に何か危害を加えるというものでもないし、ジュリアンナの命に関わることでもあるので一回だけという事でニーナの要求を飲む事にする。


 ちなみにここで俺が『一回だけ』と付け加えなければ間違いなくニーナは毎週俺のベッドで二度寝をするようになるだろう。


 まるで一回だけと言う雰囲気を醸し出しつつも、回数を言わなかった理由はそのためであると、流石の俺もそこに気付けない間抜けではない。


 そしてニーナは少しだけ残念そうにしながらも俺の言いつけ通りジュリアンナが入っているお風呂場へと向かう。


「あ、クロード様」

「なんだ? やっぱり一回は少ないから回数を増やして欲しいとか言っても既に契約は成立しているからダメだぞ」

「いえ、そうではなくてですね」

「じゃあ何だ?」

「私の裸体を見たくなったらいつでも覗きに来ていいですからね?」

「…………分かったからさっさと行け」

「まったく、我慢する必要はないですのに」


 そしてニーナは途中で足を止めて俺に話しかけてくるので何かと思えばくだらない。 …………………よく耐えたと俺を褒めてやりたい。


 ジュリアンナはまだまだ俺からしてみれば子供であるのだがニーナの見た目は大人なそれである上に年齢だけ見れば三十代というのが俺の中の悪魔が『ニーナならば別に良いのではないのか?』と誘惑してくるのを何とか振り切れた。


 もし振り切れなかった場合あの・・ニーナである。


 間違いなくただでは済まなかっただろうし、今以上に面倒臭い日常が待ち受けているであろうことは容易に想像できてしまい思わずゾッとしてしまう。

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