第40話 ジュリアンナに拒否権はない
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感情のまま家から飛び出してみたはいいものの、行くあてなど無い私は目的もなくただ彷徨い続け、気がついたら空は陰り雨が降り始めていた。
着の身着のまま飛び出してきた私は当然傘なんか持っているわけもなく、そして雨を凌ごうとも思わないのでそのまま雨に打たれながら歩き続ける。
「おい、どうしたジュリアンナ。 お前死んだ魚のような顔して、何かあったのか? てか、雨降ってんのに何してんだよ」
「…………ほっといて。 あんたに関係ない事でしょう? あと恐らく私、アイツのせいで学費を払えなくなって学園にもいられなくなるだろうし住む場所も無くなるだろうから公爵家であるアンタは今のうちから私と関わるのは辞めておいた方が良いわよ? 私なんかに関わってもデメリットしか無いもの。 それじゃ……」
私は自分が思っているよりも長い時間彷徨っていたようで既に学園も授業が終わっていたようである。
その為、恐らく学園から帰宅しているのであろうクロードが自身が乗っている馬車の中からめざとく私を見つけるといちいち声をかけてくるではないか。
それがクロードの優しさから来る言葉であろう事は理解できているのだが『雨の中傘も刺さずに彷徨っている時点で何かあったのだと察したのならばそのまま無視して通り過ぎなさいよ』と思ってしまい、思わず冷たく当たってしまう。
思えばクロードには男性というだけでアイツの面影を感じてしまい、クロードは何も悪くないにも関わらず『男性とはこういうもの』と始めから決めつけてキツく当たってしまったと、今更ながら罪悪感も感じてしまう。
「それじゃぁって、お前こんな状態で何処か行く当てはあるのか? 俺にはあてもなくただ歩いているようにしか見えないんだが?」
「別にどうだって良いでしょう? それこそ私が何処かで野垂れ死のうがクロードの人生にはなんの影響も無いわ。 それに先ほども言ったように私に関わるのはクロードにとってデメリットしかないもの。 だから私の事は見なかった事にしてそのまま帰りなさい」
「そんなわけにはいかないだろう。 見つけたからには首を突っ込まさせてもらうぞ。 そもそもジュリアンナは体調不良で早退したはずだろう? それなのに傘も差さずに歩いているのは流石に自殺行為にしか思えん。 そんなジュリアンナに拒否権はないからな」
「きゃっ!?」
そしてクロードはそう言うとまたしても私をお姫様抱っこの要領で担ぐと馬車の中に入れるではないか。
「ば、馬車から降ろしなさいっ! それに馬車が濡れてしまうわっ!!」
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