第39話 もう分かった
「…………はい?」
いつもよりも上機嫌な自分の母親を見てまさかとは思っていたのだけれどもまさか本当に父親が帰ってくるとは思っておらず、私は気の抜けた返事をしてしまう。
「あら、どうしたの? お父さんが帰ってくるのよ? ジュリアンナは
嬉しくないの?」
「嬉しいわけないじゃないっ!! あんなクソ野郎っ!! あんな奴自分の親父だとも思いたくもないわよっ!! アイツがどれだけお母さんの資産を奪っていったと思っているのよっ!! それで今のお母さんに残っているのは弁当屋と爵位だけじゃないっ!! 別荘も何もかも奪い去っていったアイツがここに来ると聞かされてなんで喜ばなければならないのよっ!! どうせ金の無心か最悪弁当屋まで奪いに来ただけに決まっているでしょうっ!! なんでここまでされてお母さんは分からないのよっ!! お願いだから良い加減目を覚ましてよっ!!」
最悪だ。
アイツが帰ってくると分かっただけで今まで溜め込んできた怒りが私の口からとめどなく溢れ出てきてしまう。
そもそもアイツはどうせ他の若い女性を愛人にして遊んで暮らしているはずである。
今更三十歳を超えた母に会いにくる理由なんて無いと少し考えれば分かる事なのに何で私の母はそれが分からないのか。
アイツの事もそうなのだが未だに現実を見ようとしない母親に対してもイライラしてしまう。
「そ、そんな事ないかもしれないわよ? やっと家族で暮らせるかもしれないのよ?」
「そんな訳あるわけないじゃないっ!! 私の他に何人子供を他所でこしらえていると思っているのよっ!! それなのになんで今まで音沙汰がなかった私たちと一緒に暮らしてくれるのかもって発想になるのよっ!? アイツが奪っていった事業もお母さんだからこそ軌道に乗っていた事業だからアイツが上手く運営できるはずもなく、むしり取った財産も使い潰しただけでしょうっ!! どうせ私たちに近付いて来るのも金の無心だけではなく今お母さんが経営している弁当屋まで奪い去ろうと近づいてきただけに決まっているじゃないっ!! なんでそれが分からないのよっ!!」
「ジュ、ジュリアンナ……っ。 そ、そこまで言わなくても、まだそうだと決まった訳じゃないでしょう?」
「もういい。 もう分かった」
「ジュリアンナ……?」
「お母さんは私よりもアイツの方を取るって事でしょう? もうこんな家知らない。 本当は今日私の身体の事でお母さんに相談したい事もあったのだけれどもそれももうどうでもいいわ」
「ちょっとっ! ジュリアンナっ!!」
そして私はお母さんの制止を振り切って家から飛び出すのであった。
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