第37話 この私が?

「はい? 恋の病? この私が?」


 一体この先生は何を言っているのだろうか?


「いやいやそんな、嘘でしょう?」

「嘘ではないです。 間違いなくジュリアンナさんはクロードくんに恋しているわね。 そう、あえて病名をつけるのであればそれは恋の病。 それも百パーセント、疑いようもないくらいに恋の病しかあり得ないわね」


 そう自信満々に私へ病名を告げる先生なのだが、本当にこの人は養護教諭免許を持っているのか疑問に思ってしまうほどである。


 そもそも恋愛とは感情の一つであり、私は感情の話ではなくて身体の不調の話をしているのである。


 にも関わらずこの先生は身体の不調の話ではなく、感情の話をしてくる時点でどうかしているとしか思えない。


「まさか、ジュリアンナさんは私の診断結果を信じないとか言わないですよね?」

「それはそうでしょうっ!! この私が男性に恋をするなんてありえないですものっ!!」


 そして私は先生の問いかけにそう反論すると、先生は私に向かってまるで子供を諭すように話しかけてくる。


「私は確かにジュリアンナさんに言ったはずです。 『どのような結果であれ信用してくれるのならば言いましょう』と。 しかし蓋を開けてみたらどうですか? やはりあなたは私の予想通り信用しないどころか私に対して反論までし始める始末。 あぁやだやだ。 自分の吐いた唾を飲み込むその姿は実にみっともない事。 そうやって頑なに否定して生きていくことも、それもまた良いでしょう。 ですが、認めてしまえば楽になるのにそうやって認めないからこそジュリアンナさんはこれから先苦しむことになるでしょう。 まぁ、今のジュリアンナさんには何を言っても無駄だろうし、今日のところは体調不良による半休という事にしといてあげますからその足で病院へ行くなり自宅で休むなりしてください。 そして翌日クロード君と会うたびに同じような症状になるでしょう。 それもその症状は日を増して悪くなっていき、ある時ジュリアンナさんは自分の気持ちに気づくのでしょうが、その時に手遅れになっていなければ良いですね


 そして養護教諭の先生はそう言うと私を保健室から追い出すのであった。





 うーん、俺は何かジュリアンナに嫌われるような事をしただろうか?


 ジュリアンナに食堂まで案内してもらった俺は思わずそんな事を思ってしまう。


 目を合わせてくれないし、会話もそっけなくて刺々しい。


 嫌われているのは一目瞭然なのだが、はっきり言って俺がジュリアンナさんから嫌われるような事をした覚えがないので余計に気付かぬうちに何かしたのだろうか? と悩んでしまう。

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