第33話 胸の苦しさは増していく

「ちなみにジュリアンナは何にしたんだ?」

「私は星定食の野菜炒め定食よ。 クロードは何を選んだのかしら?」

「俺か? 俺は月定食のサイコロステーキ定食だな。 ちなみにニーナは太陽定食の焼き魚定食だな」


 そして私はクロードの隣に座ると、それを確認したクロードが今日の昼食を聞いてくるので素直に自分が食堂の受け取り口で受け取ったものを教えるのだが、受け取った定食をクロードに教えるだけ、それをただ一言言うだけだというのに私は自分でもびっくりするほど緊張してしまっていた。


 変な感じになっていないだろうか? 声は裏返っていないだろうか? なんて事を思わず考えてしまう程である。


 そして、私のトレイに載せられている料理を見れば何を頼んだか分かるにも関わらず、あえて私にそれを聞いてきてくれるあたり、クロードの優しさが垣間見えてしまい、また私の胸が『きゅー』と締め付けられるではないか。


 もしかしたら私は本当に何かしらの病にかかっている可能性があるため休日は病院で診てもらおうと、休日の予定を入れる。


 ちなみにその間、周囲の女性たちは聞き耳を立てていたらしく、クロードが食べているセットが何なのか知った瞬間に食堂内にある受け取り口へと殺到するではないか。


 食堂に座っている者たちの中には料理を何も持ってきていない者たちが多く見えたのだが、その理由がその瞬間に分かって一人納得する。


「へぇ、野菜炒めも意外と美味そうだな。 もしジュリアンナがよければ俺のサイコロステーキ一切れとジュリアンナの野菜炒め一口交換しないか?」

「ま、まぁそれくらいならば別に良いけれど……」

「ジュリアンナって意外と優しいよな?」


 そしてクロードが私のことを優しいと揶揄ってくるではないか。


 今までの私の、クロードに対するキツイ対応を考えればクロードから私の事を『優しい』などと思えるわけがなく、明らかにこれはお世辞であると分かっているのだが、それでも私はクロードから『優しい』と言われた事がたまらなく嬉しいと思ってしまう。


 そして、嬉しいと私が思えば思うほど胸の苦しさは増していく。


 休日は絶対に病院へ行こう。


 明らかに私の身体はおかしくなっている。 今までこんな事などなかったのに、食事面でも運動面でも気を遣って生活をしているからこそ、逆に今まで感じたことのない体調の不良は原因がわからない分怖いと感じてしまう。


「なっ!? そ、そんなことを言って揶揄うのでしたら一口もあげないわよっ!?」

「すまんすまん。それじゃぁ、お姫様の機嫌が悪くなる前に交換しようか。 ほら、あーん」

「んなっ!?」

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