第29話 喧嘩したいわけではない
前世の世界だって異性が性の対象であったとしてもその異性が嫌いだという男性や女性がいたのだからこの世界でも男性が性の対象であったとしても男性のことが嫌いな女性がいても何ら不思議では無いだろう。
そしてジュリアンナは右の腕にブレスレットが付けられている(左腕にブレスレットをつけている場合は同性愛者という意味で、両方つけている場合は両性愛者という意味である)ところからも異性が性の対象である事は間違いようが無いので、性の対象は間違いなく男性なのだがそれでも男性の事が嫌いになる何かがジュリアンナには過去にあったのかもしれないので、その部分にはあまり触れないように気をつけようと思う。
それに、いくら『俺は何もしていないのに、こんな反応をされるのは理不尽だ』と思ったところで本人が生理的に無理なのだからそこはある程度考慮してあげるべきだろう。
それに、半ば無理やりその生理的無理な異性である俺の案内係にされたのだから少しばかり同情してしまうのは致し方ないと俺は思う。
「良いかしら? 少しでもこの私に触れでもしたらセクハラとして然るべき場所へ訴えさせてもらうわ。 そもそも本来であれば私の半径百メートル以内には近付いてほしくないのだけれども今回に限って特別に男性というゴミ虫にも劣る生き物である貴方に案内をしてあげるので感謝してほしいわね」
だからたとえ少し、いや、かなり? キツイ事を一方的に言われたとしてもここはグッと堪えるべきであろう。
それに俺の方が精神年齢的にはかなり年上なので、子供の言う事にいちいち反応するのも何だかカッコ悪いし大人気ないと思ってしまう。
「あぁ、分かった。 よろしく頼む」
「…………何がおかしいのよ? 言いたいことがあれば私に構わず言って見たらどうなの?」
そして俺はイラっとする感情をグッと抑えて当たり障りない返しで返事をするのだが、ジュリアンナは俺が何か言いたいことを隠しているという微かな違和感を感じ取ったのか、言いたい事があれば言えばいいと言ってくるではないか。
「そんな大したことでは無いんだが……ただ、男性が苦手というか嫌いであるにも関わらず、それでも教えてくれるジュリアンナは真面目で優しいんだなって思っただけだ」
そして俺は全力で誤魔化した後にイケメンスマイルを行使して有耶無耶にしようと試みる。
そもそも俺はジュリアンナと喧嘩したいわけではないので、相手が折れる気配が全くないのであればこちらから折れてやる方が効率的な観点から見ても良いだろう。
それで怒らせてしまいまったく案内してくれなくなったとなれば最悪だしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます