第25話 とても三十代には見えない
「あ、いや……問題ない。 構わず馬車を出してくれ」
「わかりました。 ですがキツイようでしたらいつでもクロード様の側仕え兼同級生のニーナにお申し付けくださいっ!」
そうどこか誇らしげに言うニーナの表情を見て俺はほんの少しだけ罪悪感を感じてしまう。
今真実を言ってあげる事ができればニーナはみんなの前で恥をかかずに済むかもしれない。
しかしながらもう俺は学園側に全てを押し付けると決めたのだ。 今更『やっぱり俺からニーナへ真実を告げる』なんて事はできない。
既に俺たちを乗せた馬車は走り出しており、さながら死刑執行をする処刑台へと走っていくような、そんな感覚である。
そして無情にも馬車は学園へと着き、俺はニーナと一緒に馬車から降りて校門を潜る。
敷地内に入るとまず大きな池とピクニックが余裕でできる広さの芝生が広がっており、その奥に校舎がある。
その校舎へ入ると生徒手帳を受付に見せ、学園の生徒である事を証明して受付より先へと行くことができる。
そして俺たちは周囲の女性たちの目線や遠くから聞こえてくる黄色い声を聞きながら共に受付を問題なく超えて自分達の学ぶ教室へと向い、そして俺は自分の割り当てられた席へと座る。
…………あれ? 何でニーナは問題なく受付を掻い潜る事ができたんだ? ちなみにニーナの席は俺の側仕えということもあり俺の後ろ席である。
というより今日新しい席が俺の後ろにあった。
その点からしてもニーナはどういう手法を使ったのかは知らないのだが学園側からも正式に入学が許可された正真正銘帝都魔術学園の生徒という事であろう。
「なぁニーナ……」
「何でしょうか? クロード様」
そして自分の席に荷物を片付け終えたニーナは俺の隣でいつも通り凛とした姿で佇んでいるのだが、俺に声をかけられて可愛らしく『コテン』と首を傾げながら聞き返してくる。
その姿だけを見るととても三十代には見えないのだからなんだか騙されているような、そんな感覚になってしまう。
しかしながら今はニーナの年齢よりもどうやってこの学園へ入学できたかである。
どう考えても合法ではなく違法としか考えられないのだが、その方法が全くもって想像できないのだ。
前世であれば権力と大金積んで裏口入学という手もあるのだろうが、ここ帝都魔術学園はそもそも貴族からの寄付がかなり多く、個人が用意できるぐらいのお金でこんなあからさまに違法な行為を許可するわけがない。
メリットのわりにデメリットが大きすぎるからである。
かといって数多くの貴族、さらには皇族もこの魔術学園を卒業したというものは多く、当然それだけバックは強いため一貴族程度の圧力で屈するほどではない。
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