第22話 何一つとして理解できない

「昨日感情が高ぶってピークになった時にご主人様の寝込みを襲おうとお部屋に向かいましたら開かないんですもの。 扉が。 魔術を行使しても身体強化からの蹴りを入れてもうんともすんとも。 しかも防音の結界までついているのかクロード様の寝息すら聞こえない。 当初はこの扱いには流石の私もあんまりだと思って傷ついたんですけど、よくよく考えてみればパンツを嗅いで良いのに夜這いはしてはいけないっていろいろとおかしな話ですよね? なのでどうしてクロード様がこのような事をしたのかちゃんと考えてみた結果、そういうプレイをお望みなんだな……と。 むしろそのお陰で昨晩はいつも以上にパンツ一枚で盛り上がる事ができました。 気が付いたらもう朝ですよ」


 俺と話しているのは同じ帝国で産まれ育った、同じ帝国で一般的に使われている言語を話す同年代の人間だよな? なのに何故俺はニーナの言っている言葉の内容が一つも理解できないのだろうか?


 まるでニーナが違う国の言語で話しているかのようで、何一つとして理解できないんだが?


 しかしながら分かった事もある。


 昨日俺が自分の部屋の扉と窓に、無理矢理入って来られないように魔術を仕込んでいて正解であったという事は間違いないだろう。


「いや、駄目だぞ? そもそも俺を夜這いしたらお母様にニーナが殺されかねないんだが?」

「大丈夫ですよっ!! 子供を孕んでしまえばこっちのもんですから。 流石にあの、クロード様へちょっかいをかけようとする女性に対しては鬼になるスフィア様でも孫を身籠った女性に対しては強く出れないでしょうし、そうでなくとも何だかんだで産んでしまえば孫フィーバーで怒りなど吹っ飛ぶでしょうし、その愛おしき孫から実母を引き離す事も出来ずに私は晴れて六席しかないクロード様の正妻の座に座る事ができるのですっ!!」


 サラッと『妊娠出産してしまえばこっちのもの』と言ってのけるニーナに俺はかなり引いてしまうと共に、いかにこの世界での男性という存在、そして結婚というものの価値が高いのかを知る。


 確かに男性が極端に少ない上に周囲の異性の行動を見ればなんとなく『そうだろうな』と伝わってくるので分かってはいたのだが、どうやらそれは俺の想像以上であったようだ。


「いや、流石に無理矢理は犯罪だと思うんだが?」

「それも大丈夫なので安心してください、クロード様っ!! 使用済み洗濯前のパンツを発散するために使っていいと言っている相手に夜這いした所で誰も無理矢理されたなんて思う訳ないじゃないですか。 ちゃんと昨日の会話はしっかりと録音魔術具にて録音しておりますからっ!!」


 こいつ、自分が有利な立場に立っているという事を確信していやがるっ!!


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