第16話 女性に付く寄生虫
この世界の男性は女性の事を『金を生む木』『男性に尽くして当たり前の道具』か何かだと思っており、保護区に留まって一生女性とは関わらず生きていくような男性たちや、少数派である私の父ですらたまに保護区から出ては女からお金や財産を巻き上げて行くところを見るに双方似たような価値観を持っている事が窺えてくるし、女性から財産を奪う事に対して罪悪感も無ければ犯罪であるとすら思っていないだろう。
もし、それら行為に罪悪感を感じるようであれば女性から財産を全て吸い尽くすなんて事はしない筈であるし、男性だけ死ぬまで働かなくても生きて行けるこの現状に異を唱える者がいてもおかしくない筈である。
そして父は私の母をまるで呑み終わったジュースの紙パックの如く簡単に捨てたのである。
それでも母や、母以外にも同時進行で騙された女性、また現在進行形で騙されている女性たちは父を訴えようとしなかった。
母を含めた彼女たちが決まって言う言葉が『もしかしたらまた私の所に戻ってくるかもしれない。 もし訴えでもしたらその小さな希望すら無くなってしまう』というような内容ばかりである。
それにもし訴え、その事が世間にバレた場合は父ではなく母がバッシングされてこの地域では住めなくなってしまい引っ越せざるを得なくなるのが簡単に想像できてしまう。
そんな母を見て私はこうはなりたくないと強く思ったし、男性が加害者であるにもかかわらず被害者である女性をバッシングするような女性にもなりたくないと強く思った。
しかし私がいくら『強くて輝いている昔の母に戻って欲しい』と言っても返ってくる言葉は『貴女も恋を知れば分かるわ』としか返って来ず、私は母に期待する事を止めた。
「何なのよ、アイツ……。 明らかに嫌な態度で接した私に対して笑顔を向けて来るし、私の男性をバカにしたような言葉も全て肯定してくれるし……」
ハッキリ言って当初想定したシミュレーションとは全く異なっており、攻めているはずの私の方が攻められている気分になってくる。
それに、クロード君のあの笑顔……あの一時だけは自分一人に向けられたものだという事が快感や優越感でもって私を刺激して来るではないか。
しかしながら、だからといって私はクロード君を信用する事はないだろうし、これからも『女性に付く寄生虫』として男性の事は見て行くだろう。
◆
「はぁーー、かなり疲れた……」
「そうですか」
「そりゃそうだよ。 こんな経験は始めてだから緊張でどうにかなりそうだったからな」
学園での授業を終えて俺は今別荘へ帰宅していた。
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