第15話 自慢

「あ、はい。 とりあえずはよろしく」


 そして俺はイケメンスマイルを顔に貼り付けたままジュリアンナの自己紹介は適当に流し、会話を切るとジュリアンナのせいで中断していた、鞄の中身を机に移す作業へ戻るのであった。





 私の母は、私が七歳の頃父に捨てられた。


 私の父は男性の中でも少数派とされる女性と積極的に関係を持つ男性であった。


 一般的な男性は生まれてから死ぬまで国に保護され女性たちの税金で死ぬまで遊んで暮らすというのが一般的であり、彼女を作ることもなければ、それこそ結婚する男性ともなると都市伝説と言われるほどである。


 そんな中で私の父は珍しく保護施設の外に出ては女性と行為するという男性であった。


 そして母はその数多いる父親の彼女の一人であったのだが、なぜか父は母を結婚こそしなかったのだがかなり気に入っていたみたいであり、父が保護施設の外に出て来るときは必ず一回は母のところに会いに来てくれていた。


 そして母はそのことが自慢でもあったのだろう。


 いつも自信に満ち溢れている母を私は大好きであった。


 しかしながら私の父はそんな大好きな母を壊したのである。


 母は男爵家でありながら幅広く事業を成功させてそこそこの金を持っていたのだが、父は母ではなく母の財産が目当てだったと気づいたのは母を捨てた時であり、その時には母の持つ財産はほとんどを父親に奪われてしまっており残ったのは私と小さな弁当屋だけであたった。


 残された弁当屋は父の『弁当屋なんかダセェものはイラねぇわ』という言葉ともに奪われることはなかったのである。


 そして世の女性は『普通の女性では経験したくてもできないような経験をできるのだから良かったじゃない』や『子供まで作ってもらえたのだから良かったじゃない』だとか母に言ってくるのである。


 あれほどの富と財を奪われたというのに、あんなゴミみたいな男性であれど男性とそういう行為ができたのだから良かったじゃないと言う神経がわからない。


 言葉でこそ『良かったじゃない』『普通はそういう体験はできないので幸せですね』と言いつつ裏では『ザマーミロ』と母を嘲笑っている事を私は知っている。


 そして、甘い蜜を吸えるだけ吸って、蜜がなくなったらゴミのように母を捨てた父を、そして男性を私は許せなくなっていたし、そんな男性を私たちの税金で養うのだと思うだけで腹が立ってし方がないし、そんな父親に捨てられただけで今もウジウジする母も、そんな母を指差して嘲笑う女性たちも私は嫌で嫌で仕方がなかった。


 だから私が母の分まで父を、そして男性を、そして男性に媚びる女性を憎んでやると、そう誓ったのである。

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