第13話 戦争は始まる前から勝者は決まっている

 この帝国では女尊男卑という考え方が一般的で『男性は女性が養わなければ生きていけない生き物』『女性が子供を産むために精子を提供する機械』『女性の方が優れているから神は男性の数を極端に減らしたのだ』などといった考え方をしている女性は少なくない。


 割合的にはこのクラスの半数以上は女尊男卑の思想を持っていると言っても過言ではないのだが、しかしそれはあくまでも表向きの話である。


 実際には表では強がってその様な事を言うことで男性とデートしたり、何なら付き合ったり、その結果結婚したりという事を諦める為に自分で自分に暗示をかけて『男なんてくだらない。 だから私は一人でも生きていける』と思う事にするというのが女尊男卑の思想を持つ女性の大半の真実である。


 おそらくこれは無意識のうちに自分が傷つかないように本能的にそう考えてしまっているのだろう。


 しかしながらそういう女性の場合は目の前に『彼氏にできるかもしれない男性、何なら結婚もできるかもしれない男性』が現れた場合、無意識に自分が傷つかないように守る為の手段として体のいい女尊男卑という言い訳をする必要がなくなり、むしろこの機会を逃すまいと男性に対する考え方が反転する者が大半である──と、家の書庫にある本に書いていた。


 しかしながらそれでも女尊男卑という考え方が変わらない女性というのも当然いるわけで、それが俺の隣の席の女性だという事なのだろうが、さすがの俺もクラスの大半が俺に興味津々という状況にも関わらずピンポイントで隣の席の女性が女尊男卑の思想を強く持つ女性という不運に泣きたくなる。


 これでは前世での学生時代にできなかった『授業中先生に隠れて隣の席の女子とイチャイチャする』という夢が叶えられないではないか。


 しかしながら流石にこれはいくら何でも出来過ぎでは? と思ってしまう。


 あくまでもこれは俺の考察であり事実かどうかは定かではないのだが、極力問題が起こらないように学園側が予め俺と出会っても女尊男卑の思想が変わらない女性を俺の隣の席にしていたのではなかろうか?


 たまたま俺の隣が女尊男卑の思想の女性だったというのよりも学園が予め仕組んでいたという方がまだ現実的である。


 ちなみにこのクロードの考察は半分正解で半分間違っており、実際には担任であるカレンドールがその職権を濫用して男性に興味がなさそうな女性を中等部時代の資料から導き出した上でクロードの隣にする事によって、隣の席の女性とイチャイチャするのを阻止する為のというのが真実であり、その為学園側(担任であるカレンドール)が予め仕組んでいたというのは正解であるのだが、その理由はカレンドールの大人気ない嫉妬心からである。 


 ちなみにカレンドール本人は「戦争は始まる前から勝者は決まっているのよ」とまるで職権を濫用した事に対して何も罪悪感は感じていないようである。

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