第9話 全てが浄化されてしまう

 そして、それはクロードきゅんを見てさらにそう思ったのと同時に、彼は私の天使なんだと確信した。


 だって私の子宮が先ほどからキュンキュンしてクロードきゅんを意識しているのだからこれはもう間違いないだろう。 何なら出会うべくして出会った運命の人説まである。


 クロードきゅんは高身長で顔も小さく、さらにとてつもなく美形であり家柄も公爵家とか、どこの物語の王子様なんだと思ってしまう。


 そして、そんなクロードきゅんを守るのは担任である私なのだと再確認するのと同時に、この魔術学園の生徒達に対して激しい嫉妬心を抱いてしまう。


 なんで私の学生時代は異性が一人もいなかったのか。 今の学生も私が異性が一人もいない灰色の学生生活を過ごしてきたのだから同じように異性のいない学生生活を送らなければ卑怯ではないかという、私の中のドロッとした感情を抑え込まなければ思わず口にしてしまいそうなほど嫉妬心を抱いている。


 しかしながら、そんな私の醜い感情も彼の笑顔で全てが浄化されてしまう。


 あの笑顔が私にだけ向けられていると思うと、ヤバい。 これはヤバすぎる。


 バキィッ……。


 そして職員室の中、私と最後の最後で敗れた同僚の席からペンが折れるような音が聞こえてくると共に優越感が私の中で駆け巡って来るではないか。


 しかしながら今の私ならばどんなウザいことをされても許せてしまうだろうし、クロードきゅんの事を思えばどんなイジメを受けても耐えられるだろう。


 むしろクロードきゅんの担任になるのだからそれくらいの事はある程度覚悟していたし、それでクロードきゅんの担任になれるのならば喜んで受けよう。


 それに、それほど悔しかったらあの日私に勝てば良かったのだ。 その責任を負けた自分自身にではなく私に対して擦りつけて来るのはお門違いというものである。


 その程度の人間であれば来年の担任を決める戦いでも私には勝てないだろう。


「あの、大丈夫ですか?」

「いや、少しだけ考え事をしていただけだ。 気にするな」


 そしてクロードきゅんと一緒に私のクラスに向かうのだが、先ほど考えていたことが表情に出てしまっていたようでクロードきゅんに心配されてしまったようである。

 

 あぁ、でも男性から心配されちゃった! どうしようっ! 今すぐにでもクロードきゅんを襲いたいけど、そんな事をしたら逮捕されてこの仕事をやめなければならなくなってしまう。


 あいにく今の職場はあわよくば私を蹴落とそうとするものに溢れかえっているため、クロードきゅんが来ると分かった時に学園の経費で生徒達を監視するという名目で設置した監視魔術具を使って間違いなくそうなってしまうだろう。

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