第5話 黄色い声が聞こえてくる

 本来の男ならばこれが正常であり、こう考えてしまうのは何らおかしな事でも恥ずかしい事でもないのだっ! この世界の男性こそ女性を怖がりすぎているのであり、俺は何ら間違った考えをしているワケではないっ!!


 そもそも人間は動物であり、種の繁殖という点で考えればどう考えても間違った思考をしているのはこの世界の男性たちではなかろうかっ!!


 と心の中で自分で自分を叱咤激励する事で不安な感情を消し去ると、ニーナが開けてくれた馬車の扉から俺はイケメンの風を吹かせながら外に出る。


「ひんっ!?」


 え? 今隣のニーナから変な声が聞こえてきたのだが?


 そう思い俺の頭が馬車の天井に当たらないように腕で入口の上部分を覆ってくれているニーナの方を見ると、あの普段から(俺が見ている時は)淑女然としており、メガネをかけているのも相まってツン属性の文学少女といった雰囲気のニーナのメガネは真白に曇っており、顔は耳まで真っ赤になってしまっているではないか。


 ははーん、なるほど。 先ほど俺が馬車から出る時に顔を作ってイケメン風を吹かせている姿を至近距離で見てしまったのだろう。


 普段のニーナであればそういう場合は絶対に俺から目線を逸らして自分の視界に俺のイケメンフェイスが入ってこないように徹底しているのだが、今日に限っては目線を逸らし忘れたのであろう。


 真っ赤になった顔でお湯を沸かせそうだ。


「な、何でしょう?」

「……いや、何でもない」


 いや、今更取り繕うとしても流石に遅すぎるのだが……本人はまだ隠し通せると思っているみたいなのでここは敢えて何も気づかなかった体でスルーしてやることにする。


 これでニーナは助かったと思ったのだろうが、むしろ逆に助かってなかっと理解するのはいつになるのか今から楽しみえある。


 良いおもちゃが手に入ったぜ。


 そう思いながら俺は馬車を降りて帝国立魔術学園の校門へと向かう。


「え? 嘘っ!? 男子がいるんだけどっ!?」

「しかもめっちゃイケメンっ!! あ、ときめき過ぎて眩暈が……」

「あれってうちの学園の制服だよね……うちの制服の男性デザイン初めて見たかも……はぁはぁ」

「というかこの学園の制服を着ているということはこの学園の生徒って事じゃっ!?」

「あぁ、頑張って勉強してこの学園に入学して良かった……」

「きゃぁぁぁああっ!! 見たっ!? 見たっ!? さっき私の方を向いたわよねっ!?」

「いいえ、私よ。 残念だけれどもそれが真実」


 そして俺が歩くだけで女生徒の黄色い声が聞こえてくるではないか。

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