第3話 洗濯前のパンツ

 そんな事を思いながら過ごしていると、俺と側仕えのニーナを乗せた馬車は帝国立魔術学園へとついたようだ。


 帝都に建てられたクヴィスト家の別荘からここ魔術学園までの道のり、やく半時間ほどの時間、俺の隣の席に座っているニーナの呼吸が徐々に荒くなり、そしてさりげなく(とニーナは思っているのだろうが)俺を舐め回すように眺めていた事を知っている。


 今ニーナは公爵家のメイドとしての誇りやプライド、そしてニーナ本人のまじめな性格故に何とか耐えており、それを見越してお母様は俺の側仕えにニーナを選んだのだろうが、流石のニーナも男性、それも超絶イケメンだと自負している俺と馬車という密室、しかも身体と身体が接する距離で隣に座り続けていたのである。 むしろそれくらいでよく済んだと思えるレベルだ。


 はっきり言ってよく耐えた方だと俺も思う。


 なのでニーナが洗濯前の俺のパンツを盗んでは夜な夜な発散しているのは気づいていないふりをしてあげよう。


 もし万が一その事がお母様にバレでもしたらニーナは一発でクビであろうし、そのリスクを背負ってでもパンツを盗んで発散しないと俺の側仕えは務まらないということでもあろうし、必要な事だと俺も理解している。


 おそらく、もしニーナに洗濯前のパンツで発散することを禁止にしたら、とてもではないが俺の隣で飄々と佇む事などできないどころか、他の者同様に俺へ襲い掛かってくるかもしれないだろう。


 ちなみに俺の側仕えを決める試験で唯一合格したのがニーナであり、他の使用人達は俺が近づいた瞬間に鼻血を出して倒れたり、顔を見て失神したり、襲ってきたりと不合格であった。


 それら使用人の反応であるのだが、初めこそ異様に映ったのだが今まで異性に触れてきた事がない者達であり、そしてその親も、そのまた親も異性と触れ合ってこなかったのである。


 要は異性と出会った時に感じる本能を制御する方法、性欲といった感情のコントロールする方法を知らないで育ち、またその親も、そのまた親も異性との接し方を知らずに生きてきたのである、


 言い換えればずっと男子校で社会人になりいきなり目の前に空前絶後の美少女が現れたようなものだろう。


 それでもまだ男子校だろうと小学生時代は共学であったであろうし、街に出れば普通に半数が女性であるのだ。


 それに男子校といえども女性講師や給食センターではパートのおばちゃんと、完全に男子のみの空間でもないのである。


 しかしながら彼女達が住むこの世界では生まれた時から男性と接する経験が全くない状態であり、そんな彼女達に超絶イケメンを近づけたら、そりゃ男性の免疫ないどころのレベルではないので失神の一つや二つしてしまうだろう。


「ク、クロード様、目的地につきました。 お気をつけてお降りください」

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