第2話 違う、そうじゃない。

 そして俺は、今なお『あれだったらお母さんが一緒に学園まで行ってあげましょうか?』などと言ってくるお母様を振り解いて、あらかじめ用意されていた馬車に乗って一人で魔術学園へと向かう。


 厳密には側使えであるニーナがいるのだが、そんな細かいことは置いておいて、とにかくこれがこの世界で母親なしで過ごす初めての日なのである。


 俺自身今からワクワクと恐怖心で、まるでまだ見ぬ土地へ探索に行く冒険者になった気分である。


 ちなみに俺は、前世での学生生活は女っ気がない生活を過ごし、社会人になってからは男性だけのブラック企業で扱き使われて家には寝に帰るだけで休日は月に一回あれば良い方という生活をしていた。


 そんな人生を過ごしていたあの時の俺は毎日のように『女の子とイチャイチャするような人生を謳歌したかった』と常に思いながら過ごしていると、流石に身体にガタが来たのか気がついたら過労死していたみたいである。


 そして目が覚めたら俺はこの世界に男性として転生したみたいである。


 そんなこんなで異様な程お母様に溺愛されながら五年も過ごせば、流石にこの世界の事や俺の事などが徐々に分かってきた。


 まず俺ことクロードは、自分ですら自分に惚れてしまいそうな程顔が整っており、将来とんでもなくイケメンになる事が約束されている程の顔立ちであり、しかもそれだけではなく俺の母親は公爵家当主であり、すなわち長男である俺が公爵家の跡取り息子というわけである。


 これもう勝ち組じゃんと、お父様がいない違和感には気づかないふりして喜んでいた。 これならば間違いなく薔薇色のキャンパスライフは約束されたような物だろう。


 俺がそんな淡い夢を見れたのは、この世界の男女比が一対四十というかなり偏った世界であり、殆どの男性は国に管理されているという事実を知るまでだ。


 違う、そうじゃない。 


 確かに俺は女性に囲まれる人生を求めたのだけれども、こういう事じゃないんだよなぁ……。


 しかしながらウジウジ悩んでいても仕方がないのでいっそ開き直ってこの労せずハーレム状態を楽しもうと思う事にしたのである。


 そして今現在、俺は十五歳となり高等部への中途編入をする事となった。


 ちなみに小等部から中等部までは男性が同じ空間で勉強してしまうと授業にならないという事で、もし男性が学園で授業を受けたいという者がいた場合は高等部からという法律ができている為、この世界では初めての通学であり、初めての授業でもあるということでもある。

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