転生した異世界が男女比1対40の世界だった件

Crosis@デレバレ三巻発売中

第1話 俺はお母様の息子ですからね

「クロード、準備は大丈夫?」

「はい、お母様」

「いい? クロード。 女の子は可愛い顔して心の中は狼なのよ? 気をつけなさいよ?」

「はい、お母様」

「それと、知らない女性に声をかけられても──」


 俺は今、これから帝国立魔術学園の入学式へ行く為に準備を終え登校するだけなのだが、心配性なお母様が朝からずっとこの調子で話しかけてくるのである。


「大丈夫です、お母様。 なんてたってこの俺はお母様の息子ですからね」


 そして俺はそろそろ面倒臭くなてきたので最終兵器『俺はお母様の息子ですからね』を発動する。


 その瞬間俺のお母様であるスフィア・ペンド・クヴィストは感極まった表情をした後滝のように涙を流しながら泣き始め、俺がそれを優しく背中をさすって介抱する。


 俺が何かする度にお母様はこの調子なのだが、それには理由があった。


 それは俺にお父様がいないという事にも関わってくる。


 この世界は二百年ほど前から徐々に男性の出生率だけが少なくなってきており、現代では四十人に一人という数値にまで下がっているのである。


 そして生まれた男性は基本的に帝国が管理し、精子を提供する為だけに飼い殺しするというのが一般的である。


 ちなみに飼い殺しと言っても元気のいい精子を搾取するために健康的かつストレスを極力無くす生活が約束されているためある意味では天国と思うものも男性の中では多い。


 しかしながら一歩外に出ると女尊男卑な価値観を持ってしまっている女性は少なからずいるわけで、もし万が一そのような女性に捕まってしまったら地獄のような扱いをされるのも少なくない。


 もちろん帝国もそんな現状はよく思っていない為、あまりにも酷い、それこそ監禁して男性を独り占めする者は逮捕するし、そういう女性達から国民の財産でもある男性を保護するという意味でも帝国で生まれた男性は成人と共に国の管理下に置かれるのである。


 そしてこれこそが俺にお父様がいない理由でもあり、お母様が俺を溺愛している理由でもある。


 お母様が俺を授かったのも、魔力の高い貴族向けの精子を体外受精して授かった為、俺にはお父様がいないのである。


 厳密に言えば精子を提供した者がいるわけで、そのものが生物学上ではお父様となるのだろうが、俺的にはそれは父親ではなく、どこまで行ってもお母様に精子を提供した他人でしかない。


「御免なさいね、クロード。 でもお母さんはもう大丈夫よ。 でもでも、もし何か少しでも嫌な事があったらお母様に報告するんですよ?」

「大丈夫大丈夫。 流石に気にしすぎでしょう。 それでは入学式に行って参ります」

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