第36話

「今日も、何事も起きなかったな」


 宿舎に使われている、部屋だった。

 やはり、寒々しかった。ガイアン達三人に加えて、バルキエールも居た。


「危険、去ったという事でしょうか?」


 ガイアンの言葉を受けて、そのバルキエールが答えた。


「そんな事有ると、思うか?」


「世の中、何が起こるかは判りません」


「言う様に、成ったな!」


 ガルボックが、応じた。


「明日辺り、司令官が話を持ち掛けて来るだろう…どんな事だと、思う?」


 バルキエールの顔を見つつ、ガイアンが言った。


「これ以上危険は無さそうだし、依頼を終えたい、ですね」


「気持ちは判るし、確かに、結果何をしてもいない俺たちに報酬、払い続ける訳にいかないっていうのも」


「しかし…皆さんが去った途端又我々が、襲われ始める…そんな簡単な、話でしょうか?それにそうなったら、司令官も皆さん、呼び戻すでしょうし」


「そこなんだ…今こそ知恵の、絞り所だな!まず、俺達が巡回始めた途端、襲われないの、何故だ?」


「俺達が居るのが、バレてる」


 ガルボックが無造作に、答えた。


「そう…中に居るのか外なのか知らんが、此の砦のやってる事を見張ってる奴が何処ぞに、居る」


「そして次が、重要だよな」


「何故俺達を、襲わない事にしたか?」


「面白い」


 シャウタールが口を、挟んだ。


「我々を、恐れに恐れたんだな」


 ガルボックが、言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る