第35話

 五日間、ガイアン達には何も起きなかった。

 デアリア方面への巡回は、それ程の距離は行かない。朝出発して、午後には砦に戻る道行が、五回。三日目からは、バルキエールは同行させなかった。

 いつ何が起こるか判らない、最大限の緊張と集中を続ける疲労は無論有った。が、現実の危険は訪れなかった。


 しかし、デアリア領界と呼ばれる森には確かに、何かが感じられた。デアリア鉱山の恐ろしい名前に支配されて付けられた呼び名では、無さそうだった。

 入った瞬間の印象は、五日間の巡回の中でますます、強く成った。

 それはつまり、デアリア鉱山には今も、何らかの力、何らかの危険が潜むのだと言う事を、示してもいた。


 何か、敵意の様な物。人間やドワーフやエルフだからというので無い、あらゆる存在への根元的な、何か。

 獣達が少ないというのは、土地が痩せているからだけでは無さそうだった。


「此処で、迷いたく無いな」


 ガルボックが、言った。

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